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ハートフル

お仕事です! 第1章:樋渡和馬VS住所不定無職-2

   

派遣コーディネーター、目指すはプチニート達の星!?
 
 

就職活動が上手く行かず、無職プチニートになりかけていた僕・樋渡和馬が見つけたのは、「派遣コーディネーター」という仕事だった。
面接される側だった僕が、面接する側になる……それだけでも刺激のある毎日だと思っていたけれど、面接希望でやってくる人々は十人十色・百戦錬磨の強者ばかり!?

これはそんな新人・コーディネーターの僕と、僕の教育係で通称「おてんとさん」こと天道凪子の仕事奮闘記である。
 

樋渡和馬、ニートたちの星になるべく奔走す! ついでに試用期間の二か月間も乗り切れ、和馬。

 

 

(3)

 

 それは、一通り仕事の説明や会社の決まりなどを説明受けた後のこと。
 天道さんが今日の午後の登録希望者への面接を担当するということなので、僕も勉強の為同席させてもらうことになったのだ。
 

 一般の派遣会社だと、「コーディネーター」「派遣登録担当者」「コールセンター担当」などが分業されているのがほとんどだ。
 でも小さな会社だと、それら全てを一人の人間が兼任している場合もある。
 この会社でもそういうケースのようで、現在は天道さんと支店長を含む三名の人間が、この三つの業務を兼任しているそうだ。

 ちなみに「派遣登録担当者」というのは、いわゆる登録に来た人への面接などを担当する人。
「コールセンター担当」は、既に登録している人の情報を見て、現在入って来ている仕事の紹介を行なったり、登録時と現在の仕事状況などが変わっていないか確認をする人のこと。
 企業で打ち合わせをしてスタッフのフォローもし、帰社したら既存のスタッフへ電話をかけて情報を確認する―――考えただけでも盛りだくさんの業務量だ。

「本来なら面接の研修をする時に同席すればいいと思うんだけど、研修の時に登録者が来ない事もあるので、居る内に見ておいたほうが良いと思うの」

 ファンシーで穏やかな雰囲気を醸し出しながら、天道さんが僕にそう提案してくれたのだ。
 勿論僕には断る理由なんか無い。寧ろ、物凄く楽しみだった。

 今までは、僕が面接を「される側」の人間だった。でも今度からは「する側」の人間になる。
 立場が逆になることで、「こういう人間は面接でこういう風に評価される」というのを勉強できるということは、何故僕が就職活動で不採用の嵐に見舞われたのかを知るきっかけにもなると思ったからだ。
 

「じゃあ、面接の時になったら一緒に行きましょうね」
「はい」

 登録者が登録に必要な書類の記入等を行なっている間、天道さんはその登録者が持ってきた履歴書を参考に、紹介可能な仕事があるかどうかを見ていた。
 僕はその横に座りながら時間をつぶすも、天道さんが履歴書を手放した隙に、その履歴書をちょっと覗き込んでみる。
 
 

 ―――今日の登録者は、「軽作業」を希望するという、三十代後半の男性だった。
 このピュアハート人材派遣会社は、いわゆるホワイトカラー(事務系)の職種ばかりだけでなく、ブルカラー(製造系)の職種も取り扱っている。
 今日の男性は、ブルーカラー系の仕事を希望しているようだ。
 ただ……僕はその男性が持ってきた履歴書を見て、思わず眉をひそめる。
 何故ならその履歴書……必要な情報が全く書かれていなかったのだ。
 

 現住所は一応この近辺のアパート名が書いてあるけれど、緊急連絡先は「友人宅」になっているし、携帯電話は持っていない。当然のことながら固定電話も書いていない。辛うじて友人宅の電話番号が書かれているだけだ。
 志望動機や希望条件も空欄。特に一番問題なのは、職歴欄だ。
 高校卒業以降、最初は二、三ヶ月おきで職歴が記されていた。だけれど、三年位前からは何の記載もない。
 これは、働いていないのか、それとも欄が足りなくて書かなかったのか―――判断に迷うところだ。

 僕が就職活動で作成したエントリーシートも褒められたものではないけれど、この履歴書はいかがなものか―――入社数時間の僕が見ても、そう思わざるを得ない内容だった。

「あのう……」
 派遣登録用に登録書類を別途書いてもらっているとはいえ、履歴書がこれだと流石に面接も苦労するのでは? 僕は隣で色々と資料を見ては調べている天道さんに声をかけた。

 

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