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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season16-1

   

 信じる者は救われる。テレビの放送で唐突に視聴者に訴えかけているうさん臭い一団が、いまブームを起こしていた。

 十字架を掲げた教団。ローマ教信者が日本で活動を起こしている。

 なぜだかその教団の教祖は不思議なことに一般人を引き寄せていた。

 あることができるからだ。

 それが“預言”。

 神の声を聴いて、それを世論に伝える。しかもそれが現実になって回避、助言、救済へとつなげて救世主として崇められ信じられていた。

 その脅威はもはや、神にひとしき存在と噂されていた。

 しかし反発する声もある。ある評論家が別のテレビ番組で、教祖の力にはトリックがあると罵った。けして神の力ではないと。

 許す心を持つ教祖は気にとめていなかったが、その評論家について預言したという。

 すると、命にかかることが起きる、彼は死ぬ、とテレビで公言した。

 そして、評論家は翌日、亡くなった。

 この奇妙な事件は死因が不明のため、不可解過ぎて警察も頭を悩ませていた。そこで氷室探偵事務所へ依頼してきたのは警視庁政木警部だった。

 氷室はその依頼を探偵社総出で引き受けた。いつになく御影も張りきっていた。まるで神との知恵比べのように。

 そのカトリック教の名を、浅野会という。

 

 一般人がテレビを視聴して影響をうける確率はどのくらいだろうか。

 50%くらいだろうか、それとも90%あるだろうか。

 テレビは90%以上の人が毎日、目にする情報源である。報道、バラエティ、ニュース、中でも情報を知る速報が流れると目を惹く。

 現在はデジタル放送にともなってdボタンで知りたい情報をいち早く目にすることができる。解説つきでわかりやすく端的に情報を得られる評価は高くなっている。こういう機能がリモコンひとつで操作ができている。メディアの中でもテレビは高い地位を保持している。

 だが、若者にはもっとお手軽に電車や喫茶店、学校や外出時にもスマートフォンや携帯電話、無線LANでのインターネットから情報を得られる。

 情報源で画面を通しての影響力について70%以上の男女は、どの年齢層についても信用する情報源だろう。

 今日もまた、その中で一躍ブームを引き起こしている一団がテレビ画面を占拠していた。

 疑わしく、そして関心を惹く者には影響力がある。

「わたしくどもは、いまとてつもない危機を迎えようとしている」

 奇妙な被り物をかぶって司祭のような恰好でワゴン車の上で政治家が選挙候補演説をするように、その人物は大勢の野次馬に囲まれて視線を浴びていた。

「信じる者は救われる」

 なんかよくわからないことをほざいて世間の擦れた心に訴えかけるようなことをいっている。

「神のご加護を…」そうしめくくって白い歯をみせ満面の笑顔で手を振っていた。

 野次馬は崇拝するように大喝采をして黄色い声援を放っていた。
 
 

「なんだこいつら」テレビ画面をにらみながら川上は吐き捨てていた。

「いま人気のカトリック教だろ、うさんくせーよな」火守も信じないタイプだ。

 御影は同感するように笑っていた。

「このひとたち、でもすごい影響力を与えてるわよね、信者も多くなっているらしいわ」水桐は興味があるのか目を輝かせていた。

「こらこら、水桐探偵」森谷が咎めるようにいった。「まさか入信しているのではないだろうね?」

「ま、まさか…、そんなことしないですよ森谷さん」水桐は歯切れのわるい笑顔をみせた。めずらしく動揺している。

「気にはなっている?」雲田が水桐に指摘する。

「わるい!?」目を見開いてガンを飛ばす水桐だった。が、本音を口走ってしまった。

 あきれるように森谷は目を細めた。

「だ、だって、いいことばかりいうから、このひとたち…」自嘲するように恥じらう水桐だった。

「水桐さん、ダメだよ」川上がいった。

「そのとおりだ。探偵は宗教や神などを信じることはしない。自分の頭で考えて真実を見出すものだ」氷室が現れた。

「氷室さん…」御影はつぶやいた。「いつから?」

「わたしのことはいい。ただこの一団はちょっとうさんくさい。警察も調べている」氷室はいった。

「警察が?」御影はいった。

「氷室さん、警察はなにかを掴んでいるから調べているってことですよね? なにをした連中なんですか?」火守も関心を持った。氷室が介入しているからだろう。

「預言だ」氷室はいった。

 一同は唖然となった。

 

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