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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第24話 信じる為に疑うこと

   

陰謀と悪意、そして信じたものの為、幼き王女は立ち上がる。
王女と王子の運命を駆ける王国ファンタジー。

「敵を殺したあの日から、兄様の目は変わっていないの」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、来たるべき時の為に。

 

 
「いいよ。ついていく」
「ありがとう、兄様」

 ルイスは私に何か重大なことを隠している。それが何かを知らなければ、私はルイスを救えない。

「でも、これだけは信じてほしいんだ」

 まるで、私がルイスを信じていないかのような言い方をして、彼は私の手を握った。

「――――全部、お前の為なんだよ」

 そう言った時のルイスの顔は、とても穏やかだった。けれど、私は逸る鼓動に気持ちが揺れてしまう。
 彼は、何かをする気だ。臣下達も皆、私に何かを隠している。

「兄様…」
「…行こうか?」
「は、はい」

 にこやかに微笑んだ彼に、私もぎこちなく笑みを返す。握り締めた拳が、私を繋ぎ止めていた。

***

「――――ここ、は…」
「見てほしいものがあると言ったでしょう」

 私はルイスの手を握り、広場の花壇を見つめた。

 この町に来たばかりの頃、プラインが傷ついた私をここへ連れて来てくれた。そして、咲いていた花を見せてくれたのだ。今でも昨日のことのように覚えている。それだけ印象深い光景だったから。けれど、その理由がわからなかった。何故、涙が出たのか。どうして、感情が乱れてしまったのか。ルイスがその理由を知っているのではないかと思い、ここへ連れて来た。

 そして、もう一つ。
 “二年前”のことを聞く為に。

 隠れ家だと臣下の目がある。ルイスが本当のことを話してはくれないのではないかと思い、外を選んだ。
 ここ数か月で、私は人を疑うことが多くなった気がする。疑うことを覚えなければ、人を信じることが出来ないと思うから。こう考えてしまった要因には、少なからずあの日の襲撃が関係しているのだと自分で思う。

「ここにはね、花が咲いていたの。私が部屋に籠っている間に季節は変わってしまったから、もうここにあの日の花は咲いてはいないけれど」
「プラインに連れて来てもらったのかい?」
「うん。でも、そう仕向けたのは兄様だよね」
「…………」

 私の言葉にルイスは何も返さず、花壇を見つめた。土だけしかないそこを見て、彼は目を細める。まるで、懐かしいものを見るかのように、ゆっくりと。

「青色の花が咲いていたの」
「――――それを見て、どう思った?」
「涙が出たわ」

 とても、切なかった。美しいものを見ているのに、その時私の心を満たした感情は、『痛み』だった。自分のことなのに、わからない。私自身にわからないのなら、絶対にルイスが知っている。

「教えて。私に何を期待しているの? 私は一体、どうしてしまったの?」
「お前はどうもしていないよ。そうなって当然だったのさ」
「濁さないで! 私は真実を知りたいの!」

 そう叫んだ私を、ルイスは辛そうに見つめた。その目を見ると、私まで苦しくなってくる。

 

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