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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season16-3

   

 古城のような建物がアジトの浅野会に潜入した。

 御影、水桐、そして大地がついてきてしまった。氷室たちはべつの場所で民宿を根城にして待機している。

 雲田お手製の通信機や発信機、カメラ機能のピアスやボタンを装着させて潜入する。

 呼び鈴を押すときに浅野が背後から声をかけた。凍り付いた御影だった。意表をつくのがうまい男だ。

 五大信者の百瀬と油原も同行していた。取り合ったのがそのふたりだった。教祖の浅野は入信志望だとしても対面の式まで愛想よく話すことはなかった。
 

 一方、氷室たちは御影たちからの情報を分析、解析していた。おもに雲田がパソコンの前で情報収取をしていた。

 いつのまに大地が勝手に御影と水桐についていってしまって、作戦がボツると懸念していたが、どうやら突破できて安堵していた。

 

 探偵社の車から降りた御影と水桐。ふたりで潜入することになった。

「氷室さん、みなさんはどこで待機を?」御影が通信機にむけてしゃべった。

「心配するな、そちらが合図をよこせばこちらはすぐに駆けつける。だから逐一報告は必須とする」氷室がいった。

「了解」

 御影と水桐はそのまま浅野会の入り口にむかった。

 八王子市、最寄り駅はだれでもしっている中央本線高尾山駅だ。

 そこから徒歩10分ほどの観光スポットよりはずれた影さすところにその入り口はある。

「十字架のマークの立て看板。表通りから奥まった場所にあるんじゃ見えやしない」御影はいった。

「気づかないよね、やる気あるのかしら」水桐もいった。

 ふたりがそういったときに背後から声をかけられた。「ねぇ」

 ぞくっと背筋が凍りついた。油断した。やばい。バレたか。いや、なら入信志望者であると伝えてごまかすしか…。

「あら、大地ちゃん」水桐がさきに振り返りあとさきを気にせずに声をかけた人物に正面をむけていた。

 不用意にと思った。水桐はあの一言だけで気づいたのか、だれの声であったのかを。

「やれやれ、大地さん来ちゃダメっすよ。氷室さん…」御影は通信機にむけてささやいた。

「待って…、わたし、どうしてもこの件に関わりたいの。もしかしたらわたしの心の弱さを晴らしてくれる、そんな気がするの」大地は稀に見る真剣な眼差しだった。

「でも、これは氷室探偵事務所の決定した調査メンバーであって、氷室さんの指示を覆すことになる。それはダメですよ」御影は反論した。

「わかっている。でも、わたしはそれでもこういう神がかったことには手を拒んではいられない。むしろ立ち向かうべき」大地をいったいなにがここまで真剣にさせるのだろうか。たずねてみるか。

「御影くん」通信機から呼びかけれらた。

「はい…」御影は応えた。氷室からだ。

「入り口前まで大地さんがいってしまったのであればしかたあるまい、そこで引き返したらかえって怪しまれる。上空から監視カメラがあるようだ」氷室がいった。

 雲田が御影に取り付けた通信機には半径3メートル以内の電磁波を感知するシステムも内蔵されている。

「マジかよ、じゃぁ、しかたない。おれたちは会社の同僚ってことで入信する。知り合いであれば入信書は不要でしょう」御影は、車の中で消えていることに気づかなかったのか、と先輩方に文句をいいたいのやめておいた。

「そうね、それでいきましょう。入信者はどんどん増えているからね」水桐がいった。

「よかった」大地は安堵した。

「いきますか」御影は先陣開いた。

 カトリック教徒「浅野会」のアジトへ潜入する。

 入り口の錆びついた扉を開くと樹木に囲まれて道が一本続いていた。

 50メートルは歩いた。そのさきにちらっと見えた。

「おそらく建物のようだ。あそこが浅野会の本部…、なんか古い古城のようにもみえるな」御影はその外観を見ながらいった。

「そうみたいね」水桐がいった。「あなたたちも見えている?」

 発信機とはべつに御影はワイシャツのポケットボタンに、水桐はピアスにそれぞれカメラがあり撮影している。

「あっちにバス」大地が指さした。建物から少し離れたところに、信者が乗りこむバスが止まっていた。100名は乗車できるバスが一台東京駅まで行って往復の疲れを休めるように静かだった。

 その横にはワゴン車が止まっている。教祖が演説するためのお立ち台だ。

「あらためて思うと、下品な車だ」東京駅での光景が頭をよぎった御影だった。

 建物の扉の前にきた。

「ここが玄関かしら」水桐がいった。

 呼び鈴もある。

「いいからまずはご挨拶だ」御影は呼び鈴に指を押す直前に、またしても背後から声をかけられた。

 三人はそのまま前方の扉をにらんだ。男の声だが聞き覚えはどうやら三人ともなかった。

 ゆっくりと振り返る御影たち。

「どうも」御影が挨拶した。

「だれかな、あなたたちは?」

 男はだれかはわからない。ただ浅野会のおそろいの信者が纏う司祭のような恰好をしている。

「あんた、浅野会の教祖、浅野 あざ矢、本人だな」御影がテレビや東京駅で目の当たりにした本物だ。

 演説していたときの声と少しガサツな荒々しい声になっていた。見た目の雰囲気も教祖という主役というより完全にただの中年オヤジのコスプレのように見える。

 御影は目を細めて軽蔑していた。

「そうだが、きみたちは入信者か?」疑わしそうに見据える浅野だった。

 間を置いた御影だった。にらみつけていた。この場でこいつを縛り上げてしまえば終わりになるんじゃないか。あとは警察に引き渡し、事情聴取をする。

 逮捕されて事件は終了だ。

「おかしなもんだな」浅野が唐突にいった。「きょうこの時間に訪れる入信者は、ふたりだと思ったが、いささか数が合わない。はたしてこれはどういうことか…、預言がまさかズレるようなことになれば、これは我々の威信にかかわる」

 水桐、大地に手渡された広告。それが人数合わせにしているのだろう。ひとりくらいのプラスマイナスはよくあること。これほどまで意識するこの男の疑念はすでに怪しんでいる。

「そうなんだ」御影はごまかさないとならない。「おれと、こっちのお姉さんが入信志望。そんでもってその話をしたらついてきた同僚の女ですよ」

 御影は大地を指した。

「そうか、まぁよかろう、入信したいのであれば手続きをまずするといい。そして金を支払うこと、よいな」浅野はそういうと、御影たちを押しのけて扉を開き入っていった。

 ほかにふたりの男女があとからその御影と浅野の対面を見ていた。

「わたしは五大信者のひとり油原です」

「同じく五大信者のひとり百瀬です。入信志望者ですって?」

 御影たちは頷いた。

「そう、なら入って…」百瀬は優しく応対してくれた。

 

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