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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第25話 ピクシス・バーナード

   

陰謀と悪意、そして信じたものの為、幼き王女は立ち上がる。
王女と王子の運命を駆ける王国ファンタジー。

「私とルイスの周りの人間は、必ず危険に晒される。私はそんな自分を今でも、生きていていいとは思えなかった」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、来たるべき時の為に。

 

 
 私のこの考えは、きっと甘いのだろうと、そうわかっていた。それでも、私はこの方法以外に、戦う術が思い当たらない。そしてこれは何よりも、ルイスの心を守る為の方法だ。彼を――――ただの人殺しにしたくない。彼がどんな恨みを抱いていようと、それに支配されて人間を殺すような真似はしてほしくない。そう望む私は、愚かだろうか――――。

「…そういえば、さっきから妙に人が少ないな」
「? …言われてみれば、そうかもしれないけれど…」

 ルイスが訝し気に眉を寄せた。その言葉に頷き、私も周りを見回す。確かに今日はあまり人を見かけない気がした。それに、ここは町の中央にも関わらず、今日は私達以外に誰もいない。何かがおかしい。

「考えすぎだろうか」

 ルイスのその不安そうな声に、私は頷いて微笑んだ。

「うん。きっと気のせいだよ」
「――――そう、だね。じゃあそろそろ戻ろう。ルドウ達が心配しているだろうから」
「はい」

 ルイスから差し出された手を握り、歩きだしたその時だった。――――“悲鳴”が聞こえた。

「!? に、兄様ッ?」
「…ああ、聞こえた」

 幾つもの悲鳴がそこへ重なる。普段この町で滅多に争いごとは起きないと聞いていた私は、咄嗟にルイスの腕に飛びついた。
 ――――悲鳴が、恐ろしい。まるで、あの日の私のようだ。
 この平穏な町で、何かが起きている。そんな気がして、私とルイスは声の聞こえた方へと走りだした。途中、彼の手によってフードを被せられる。顔を隠す為だろう。

「不自然にならない程度にフードを被るんだ!」
「わ、わかった」
「…何か、嫌な予感がする」
「…………」

 私もそう思った。段々と近づいていく悲鳴の元凶へ向かうことを、体が拒否しているかのように、自然と呼吸が苦しくなっていく。

「! あそこだ…! 何だ…!? あの人だかり、は――――」
「? どうしたの兄様…」
「レイシー、だめだ、止まって」
「っきゃ」

 ルイスが前方に人の輪を見つけた。それに駆け寄る間もなく、彼は足を止める。そんな彼に腕を引かれるようにして、失速した私。無理矢理掴まれた腕が痛い。

「兄様、もっと近くへ行って皆に話を聞いてみましょう?」
「だめだ」
「え…?」
「だめだよ、レイシー」

 ルイスの見開かれた瞳が、僅かに震える。その様子を見て嫌な予感がした私は、導かれるように、人混みの中へと飛び込んでいった。そんな私を止めることなく、ルイスは立ち尽くしている。
 ――――ルイスの様子がおかしい。一体彼は何を見たというのだ。
 

 

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