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エリカの花言葉 第4話 アジサイ《冷酷》 2

   

 夏休みが明けてから、どこか物思わし気な様子である恵里香を心配する洋平と弘行。
 ある日、級友である裕太と亮治が、恵里香が子役時代にヒロインを努めたドラマ『紫陽花の涙』で共演していた、女優の片山美奈子と出会い、恵里香の現状を尋ねられる。
 すると、片山美奈子によって過去に恵里香の身の回りで起きた事件が週刊誌に取り上げられ、恵里香が菖蒲町に越して来た理由や、抱えていた重苦が明るみになった。

 

 九月一五日(月)

 菖蒲町ではこの時期になると毎年、堀北中学校の近所にある神社で、秋祭りが行われていた。今日は祝日の為に学校が休校である恵里香は、夕方に祭りへ行くまでの時間を家で過ごしている。
 自分の部屋から出てリビングを訪れると、椅子に腰掛けた母の背中が、小刻みに震えているのが見えた。
「どうしたの母さん、寒いの?風邪でもひいたの?」
 恵里香が母に寄り添い背後から優しく肩に手を置くと、母は階段を目の前にして背中を押されたように『ビクン』と肩を上げて驚く。
「お母さん!大丈夫!」
 母の反応があまりにも突飛あることに恵里香は驚き、顔を見つめると、ブツブツと小言を呟いているのが分かる。
「もうすぐ出てくる……あの子が出てくれば、私も殺される……」
「お母さん、大丈夫、絶対に見つからないから」
「私も、あの人のように殺されるんだ……ねぇ、どうしよう、どうしよう!」
 母は幼い子供のように大きな声を出して泣き出すと、恵里香に抱き付いて助けを縋った。
 
 夕方になると洋平と弘行は、祭りへ行く迎えに、恵里香の家を訪れた。
 インターホンを押して呼び出すと、顔の幅ほど開いたドアの隙間から、恵里香が姿を見せる。
「おう、迎えに来たぞ」
 弘行が声を掛けると、浮かない表情をする恵里香の背後から、叫び声のような言葉が聞こえた。
「エリカ、お母さんを一人にしないで!お願い、一人にしないで!」
 その声が聞こえると、恵里香は困惑と恥じらいを堪えるように、潤んだ赤い瞳を強張らせている。
「ごめん、やっぱり今日行けない」
「おい、どうしたんだよ。奥にいるの、母ちゃんか?」
 弘行が背伸びをするようにして家の中を覗こうとすると、恵里香は慌てたようにドアを閉めた。
「何だよ、一体、何があったんだよ……」
 その出来事には腑に落ちない気持ちのまま、二人は、裕太、亮治、陽子の三人と待ち合わせた公園へ向かった。
「エリカ、大丈夫かなぁ……」
「奥から聞こえた声、多分、母ちゃんだよな」

 

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