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ミステリー・SF・ホラー

地下室のスケッチブック(後編)

   

青年には秘密があった。
彼が筆を執ると、お化けの女の子を召喚できるらしい。
お化けに憑りつかれた彼は、除霊するわけでもなく受け入れる。
そして、彼の即売会会場にまでお化けが乱入!?
彼は、なぜお化けと共に生きる道を歩んだのだろうか?

 

 俺の家は、会社がある横浜駅周辺からそんなに遠くないところにある。横浜駅からもうちょっと田舎の方に数駅下ったところにある。会社から割と近くにアパートを借りているので、出勤が楽である。

 ところで、俺の会社がおんぼろの零細企業であると同時に、俺が住んでいるアパートもいわゆる曰くつきのところだったせいか、格安のおんぼろアパートである。

 さて、俺はアパートの何階の何号室に住んでいるか。
 正解は、アパートに一室しかない地下室である。

 俺はアパートの一階から地下室への階段を下り、自室の扉を開けた。
 現在の時刻は午後六時。しかも冬。だから寒いし暗い。

 俺は地下室の明かりをおぼろげに点けるが、まるで人魂がふわりふわりと浮かんでくるかの如く、部屋の照明は明るくなっていった。

 地下室なのでもちろん窓はない。おぼろげに照らし出される明かりが、真っ白な立方体であるこの空間を際立たせる。

 俺は意外にこの部屋が好きだ。気分がいいときは安酒でも呑みながら、地下室に彷徨う人魂のような明かりを眺めては、くつろいでいる。

「さて、召喚魔法でも唱えるとするか!」

 俺は部屋のデスクに置いてあるスケッチブックを取り出した。

 愛用の〇.九ミリメートルのシャーペンを構え、スケッチブックに軽くラフを描き出す。
 まず、スケッチブックに人物を描くため、丸や四角、それと立体でデッサンのアタリ線を引く。このとき、だいたいこんなポーズで、こんな姿をしている、とイメージを思い浮かべ、それにそって線を描き出す。

 アタリ線が引けたら、次は顔の表情、髪型、服装のディーテイルを描き込む。
 中でも俺は目の表情に一番力を注ぐ。目は人形の命であり、キャラの命。
 こうしてディーテイルを描き込みながら、キャラにリアリティを出すように描くため、
影を付けたり、服の皺も描き込む。

 気がついたとき、俺はミレイの姿を描ききっていた。

「ミレイ様、ミレイ様、今日も俺の前にあなたのお姿を現してください」

 最後におまじないを唱える。
 すると、スケッチブックから目を離し、部屋の中央部に目を向けると、そこには彼女の姿がある。

 

-ミステリー・SF・ホラー

地下室のスケッチブック 第1話第2話