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ミステリー・SF・ホラー

輪廻戦場

   

少年は繰り返し、とある悪夢を観ます。
どうやら、巨大ロボが彼を呼んでいるらしいのですが……。

退屈な日常を取るか?
死と隣り合わせの非日常を取るか?

少年が選んだ決断とは!?

 

─ 1 ─

 

 あかね色に広がる大空を眺めていた。
 空に浮かぶ鋼の鳥たちは爆音をさえずりながら散っていく。

 俺は、相棒の巨大ロボ・グランドキャニオンに乗り込もうと、コクピットのドアに手をかける。そこで、誰かが俺の手を遮った。

「知香(ちか)……。どうした?」

「やっぱり行かないで! 今度のミッションは普通じゃないから、もう戻って来られないかもしれないのよ!」

 メカニックの少女は、俺の手をぐっと引きよせる。
 その反動で、俺は思わず、彼女の体を抱き寄せる姿勢になった。

「どうしても、行かせてくれないか? 俺たちには守らないといけないものがあるんだよ!」

 少女は俺の胸に顔を沈めて泣きじゃくった。
 いつもは俺のメカを整備してくれる冷静で有能な技術士だが、この子はどこにでもいる思春期の女の子と変わりない。
 まあ、俺も同い年だけれど。

「お二人さん、お取込み中のところ失礼! 先に行くぜ!」
 俺たちの前を走って横切り、キャンドキャニオンの量産型に颯爽(さっそう)と乗り込んだのは、俺の親友、友也だ。

「知香、俺を信じて欲しい。君が信じた俺と、そして君がいつも整備してくれるグランドキャニオンを信じて欲しい。俺たちは、この戦いに負けるわけには行かないんだよ……」

 諭すようにそう言うと、少女はあきらめたかのように、俺の手を離してくれた。俺は別れ際に、生涯ではじめての恋人へ軽く口づけをしてから、相棒のメカに乗り込んだ。

『グランドキャニオン、発進! 海原大地(うなはら・だいち)、飛びます!』

 巨大な山岳型ロボットは、爆発音を鳴らし、背中のブースターから炎を噴かせて大空へ舞い上がった。

 元は青かった大空は、既にたくさんの銀色の鳥たちの残骸で深紅色に染まっている。

 敵軍の戦闘機は、容赦なく俺たちの軍に銃撃戦を仕掛けて来る。
 仲間の量産機たちは、敵のマシンガン、レーザー光線、対空ミサイルを死ぬほど浴びて、次々と爆破し、落下して行く。

 俺のレーダーの前には、友也のメカが映った。
 どうやら彼は敵軍十機に囲まれていた。
 予想以上に強い敵軍十機に包囲され、もはや絶命的だ。

『近野友也(こんの・ともや)、量産機零五号、自爆します!』

 友也は、強烈な爆発音と共に、鋼の相棒に抱かれて果てた。
 あかね色の空は、輝く星となった銀色の鳥を呑みこんだ。そして、周囲で包囲していた鋼の鳥たちも片っ端から破壊して行く……。

(さらば、親友! またいつか逢う日まで!)

 散って行った親友を追悼(ついとう)する間はない。俺自身、敵機の餌食(えじき)にならないように必死で戦闘するのがやっとのことだ。

『グランドキャニオン、拡散レーザー砲、発射! 半径百メートル以内にいる全ての敵機を焼き払う!』

 俺の相棒は真っ赤な光に包まれ、発火し、火炎の渦を円心状にまき散らす。
 拡散したレーザーのヘビたちは、羽ばたく銀の鳥たちを、一機も残らず容赦なく食い尽くして行った……。

『わはは! さすがだな、グランドキャニオンのパイロットよ! だが、貴様はここで死んでもらう!』

 破壊の限りを尽くしたあかね色の空上空から突然、真っ黒いカラスのような巨大ロボが現れた。

 敵はなぜか俺を知っていた。そして、俺もなぜか奴を知っているようだ……。

『暗黒の剣の一撃で闇に呑まれよ、憎き宿敵め!』

『てめえなんかに地球の平和は渡さない! 頼む、グランドキャニオン……今こそ、聖なる剣を抜き、邪悪を断つんだ!』

 大ガラスは漆黒の波動がうねる邪神の剣で突っ込んできた。
 グランドキャニオンは、純白の波動を輝かす聖なる神の剣で跳ね返す。
 二機は、壮絶な剣裁きで、金属音を虚空へ響かせ、一歩も引かない。

 だが……。
 気がついたとき、俺は敵軍の包囲網にいた。
 このカラスはおとりだったのだろうか?

 時、既に遅し。
 集中砲火の爆撃音が俺の相棒を蜂の巣へ変えて行く。
 グランドキャニオンの装甲が破られ、真っ赤に大破していくコクピットの中で、俺の意識は大海の果てへ沈んで行った……。

 

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