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ミステリー・SF・ホラー

聖夜に祈りを 前編

   

21世紀より少し未来の地球は破壊的になっていた。
自然が存在せず、生物は化学に頼るしかない道を辿っている。
しかし、一部の人は、いつか枯れた大地に自然の木々が芽を出すと信じ、活動をしている。
未来に自然を残すには、過去に戻り、人の負の感情に感化して汚れた精霊を浄化しなければならない。
その為に21世紀のとある年にやってきた、まりあとユーリ。
まりあはクリスマスを恋人のユーリと体験することをとても楽しみにしていたのだが…

SF+アクション+ラブコメ÷3みたいな展開のお話です

 

 
 風は、夜の帳と共に冷たさを増していた。
 ビルの屋上にいれば、風の強さも増して冷たさもかなりあったはず。
 その場にとても不似合いな姿の少女が、身の丈ほどある刀を構えて何かと対峙している姿は、誰が見ても不釣り合いで異様でしかない。
 しかし、少女はそんな異様な風景の中で、淡々と愚痴をこぼしていた。
「あ~あ、なんでこんな時にユーリの勘が当たっちゃうのよ。とはいえ、ユーリの勘が外れたことなんてないんだけど。こういう時くらいまさかの……って感じで外してくれてもいいのに。ねえ、あなた、ちゃんと聞いている? 見てよ、このドレス。クリスマス・イヴだから奮発したのよ? 真紅の生地で仕立てたドレス、袖口と胸元、そして裾には真っ白なファーをあしらって、サンタクロースの女の子版って感じで、なかなかのものだと思うのよ。なのに、なにが悲しくて、そんな女の子が無人廃墟のビルの屋上で、あなたと対峙しなきゃいけないわけ? しかも日本刀を持って……! 普通、こういう時は誰かに贈るプレゼントか貰ったプレゼントを持って、洒落たシャンパン飲みながら他愛もない話に華を咲かせるものよ。この時代の女の子がする普通のことをしたかっただけなのに……あなたもね、ちょっとは気を遣いなさいよ……!」
 愚痴は次第に怒りへと変わり、刀を持つ手に力が入る。
 少女が対峙しているのは、人ではない。
 見える者には見えるし、見えない者にはどう努力をしても見ることが出来ない、本来であれば自然の木々、花や風といったものを司る精霊と呼ばれている彼ら。
 本来であれば──と前置きがあるのには理由がある。
 かつて精霊だったものたち──という意味で、彼らの一部は精霊であって精霊ではなくなってしまった。
 長い時間をかけて、人間が出す負の要素に感化され汚れてしまったものたち。
 そのものたちを見つけて捕獲するのがユーリの仕事、ユーリの描いた魔方陣に囚われた汚れた精霊を討ち、浄化するのが少女──まりあの仕事。
 ちなみに、少女と表現しているが、実際は女性といってもいい歳、外見がまだ少女のようであるというだけである。
 これまでの説明でなんとなく想像できると思うが、ユーリとまりあはこの時代の人ではなく、この時代からもう少し進んだ未来からの来訪者。

 

-ミステリー・SF・ホラー

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