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コドモが寝た後で××× 第5章 雨音は… 3

   

極端すぎる夏川パパ、けれど海老蔵もなんとか無事に回復をしている
この一件が更に春日家と夏川家を結びつけることに繋がっていく

 

 

◇◆◇◆◇

 
 雨音――
 いつもならあまり気にしない雨音だが、この時ばかりはこの雨音に感謝した。
 静かな病院、治療室のランプが消えるのを待つこの苦しみ。
 ただ待っていたのでは、悪い方へ、悪い方へと考えが向かっていく。
 園長先生に付き添われ、着替えた雛菊ちゃんがオレにタオルを差し出した。
「春日さん、ここは私が居ますから、とりあえず着替えてらしたら? 海老蔵君が気が付いた時、お父さんが風邪を引いてしまっていては、責任を感じてしまいますよ。子供は大人が考えているより、ずっとよく物事を見ていますから」
 諭され、それが正論だとわかっていても、身体がそこから動かなかった。
 園長先生は小さな溜息をひとつ付くと、通った看護師さんに毛布をひとつ頼んでくれた。
 持って来てくれた毛布に包まり、失った体温が戻ってくると、不思議と気持ちが落ち着きはじめていた。

 治療中のランプが消えたのは、昼をかなり過ぎた頃。
 空腹感も感じなかったから、時間の感覚がない。
 痛々しい姿で出てきた海老蔵の意識は、まだ戻っていない。
 暫く入院という事態は免れなく、オレは個室をお願いした。
 個室だと、泊まりも可能らしい。
 毎晩の泊まりは厳しいが、できるだけ海老蔵の傍にいてやろうと思う。
 学校が夏休みに入る時期で、よかった――
 こんな事態でよかったもないが……
 一旦海老蔵のことを園長先生にお願いし、オレは担当医から状態の説明を受ける。
 足の骨折は綺麗に折れていたので、比較的治りも早いだろうが、リハビリは厳しくなるので、その辺のコミュニケーションはしっかりと親がやってほしいとのこと。
 気になるのは、雨に打たれ過ぎて衰弱していることと、切りキズすりキズに泥や木の粕が入り、破傷風になりかけているとのこと。
 清潔に、無意識に掻き毟ったりしないよう、注意してくれと、厳しく言われた。
 海老蔵の夏休みは、治療で終わること必須。
 下手したら、秋の運動会も参加は難しいだろう。
 それでも、海老蔵は後悔しないと思う。
 恋をする、はじめての恋は、歳関係なく必死で夢中になるものだ。

 

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