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SF・ファンタジー・ホラー

幻儚奇譚<1> 青い鳥

   

 幻儚な奇譚の誕生です。
 新しい奇譚の誕生を寿ぎ、読者の皆様のご繁栄を願い、第一回は、〈幸せ〉をテーマにしました。
 人は、いつも、幸せの青い鳥を捜し続けていますから。
 たとえ自分の力で解決のつかない境遇に置かれても……。

 

 8世紀後半、カール大帝は、ゲルマン諸部族を統一した。
 と、教科書には書いてある。
 だが、〈統一〉とはいっても、現代のEUの統合とは、もちろん、違う。
 各土地では、それぞれの部族長が覇を誇り、諸侯が領地を治めている。
 カール大帝は、彼らの調停役、というような地位にあったのである。
 通信網や道路が未発達の当時では、この程度の政治体制が限界なのだ。
 道路が未発達――。
 さよう、当時の欧州は、ほとんどが、鬱蒼とした森であった。
 その間に点々として耕地があり、館や砦がある、という状態なのである。

 さて、ゲルダは、朝から黒い森の中を、さまよい続けていた。
 鬱蒼とした森の中でも、特に深い森である。
 継母から、「すみれの花を11束、採ってくるんだよ」と命令されたのだ。
「すみれの花ですか?」
「そう、舞踏会の飾りに使うんだ」
「でも、今は秋の終わり。すみれの花は、ありません」
「何だね、この子は。生意気なことを言って」
「でも……」
「黒い森へ行ってごらん。あそこには、魔道士の老婆がいるはず。魔道士なら、すみれの花くらい出せるだろう」
「でも……、魔道士なんて……」
「でも、でも、って、うるさい子だねぇ」
「……」
「魔道士が怖いのかい? 口答えすると、あたしゃ、魔道士より、怖くなるよ」
 こうして、ゲルダは、黒い森へ来たのである。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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