幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

恋愛

コドモが寝た後で××× 第2章 二面性 1

   

育児と大学という生活に、バイトも加わり忙しい日々を過ごすオレは、海老蔵のベッドを買いに行く
そこで娘に小言を言われている夏川さんを見かける

 

 
 帰宅すると、海老蔵が台に乗り、台所で何かをしていた。
 危ないから――と、止めさせることはしない。
 海老蔵には海老蔵なりの考えがあってやっていること。
 ガスは元栓切ってあるし、それには触れるなと言ってある。
 海老蔵がやることと言えば、レンジで温めたり焼いたり。
 海老蔵と暮らすようになって、一段と冷凍食品が増えたのは、言うまでもない。
「お帰り。パパもピザ食べる?」
「ピザか。じゃあ、頼もうかな。ついでにインスタントコーヒーも入れてくれたら、助かる」
 頼みごとをすると、海老蔵は嬉しそうに笑う。
 頼まれること、すなわち、頼りにされていると、ここに居ていいと言われているのだと再確認しているのだろう。
 子供は子供なりに気を遣っているのだ。

 夕食の前の腹ごしらえをしながら、オレは帰りがけに買ってきた携帯電話を海老蔵に渡す。
「あのさ、海老蔵。春休みの約束、出来るだけ守るけどさ、留守がちになるんだ。いいかな?」
「いいかなって、もう決めちゃったンでしょ、パパ。いいよ、ボク、いい子で留守番しているから」
「そっか。聞き分けよくて助かる。だけど、時には子供らしくわがまま言っても、いいんだぜ? ま、だからってそのわがままを聞き入れるってわけじゃないけど」
「ヘンなの。だったら、言うだけ無駄だよ、パパ。ボク、無理していないよ。携帯って、ボクのこと気にしてくれているから、買ってくれたンだよね?」
 子供にここまで先読みされる自分って、どうよ。
 子供が親にしてくれるって言うけど、まさにそんな感じだ。
「そっか。ここ、1番にはオレの携帯番号。2番には根津の携帯番号。3番目は幼稚園。必ず先生の誰かに繋がるから、落ち着いて状況を話すように。わかった?」
 幼稚園に通う大半の子供はもうこういう携帯を持っているのだという。
 きっと、海老蔵だって欲しかっただろうに、ひと言もそんな事は言わないし素振りも見せなかった。
 手に携帯電話を握り締めた海老蔵の顔が嬉しそうに笑う。
 無理して笑っていない分、オレも救われる。
 ――と、その直後インターホンが鳴り、玄関を開けると、今朝見た女の子が立っていた。
 

 

-恋愛