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異世界ファンタジー

水面の国 5

   

過去を清算する戦いの火蓋が開く

雅と杜と環は
それぞれが持つ力を屈指し火の国に立ち向かう

 

8章【戦闘体制】

 
 
 姿を見せた杜は、二十歳前後の姿をした青年。

 あの、昔の映像で見たままの姿であった。

「なんで、子供の姿?」

 姿を見せた直後に、雅が発した言葉だ。

「まったく、あなたはいつの時代でもお変わりない。仕方がなかったのですよ。あの時は既に、祠から持ち出されてしまった後で、力が限られすぎた。誰かの身体を借りるという手段にでられないくらい。だから、姫以外には姿を見られていなかったでしょう?」

「と、いうことは。幽霊状態?」

「こちらの言葉でいえば、そういう表現も間違ってはいないが――死んだわけではない。少し、不愉快な例えだな」

 互いの不平不満が衝突しているような空気がどんよりと漂っている。

 どちらにも寄れない環はひとり、ハラハラが止まらない。

「だいたい、なんだって移動したりするのよ」

「好きで移動したわけじゃない。もとはといえば、おまえの祖先の不注意が招いたことだ。僕が責められるのは、おかしい」

「だったらなんで、家訓のように厳しく言い伝えるよう、釘をささなかったのよ。『うろこ』にしたって、紛らわしい。記憶と一緒に消えてしまうなんて」

「そうでもしなければ、また見つけられて襲われていた。水に近づくな……なんて、生活していく上で無理だろう。僕は適切な対処だと、思っている」

 互いの口論が止まる気配はない。

 ここで、環が口を挟む。

「ちょっと、申してよろしいかしら?」

「術師、久しいな。こうしてまた再会できて、うれしいぞ」

「杜殿、そう申していただけるのでしたら、『うろこ』は原型を保つよう、指示して頂きたかったですわ」

「いや術師。そちらの事情まで僕のせいにされては困る。僕が肉体を保っていた間に、再会は果たされていない。と、いうことは。そちらがそう判断したのだろう?」

 言い返されてみて、それもそうだと納得してしまう。

「肉体って、今も幽霊状態?」

「おお姫、いいところに気づかれた。姫は宝剣を守れとおっしゃられた。言葉通り守りは致しましたが、いかんせん肉体が先に限界に達してしまい、温存の為封印をしたのですが――どうやら、宝剣と一体化してしまったようで。宝剣に宿る力が、僕の肉体を維持してくれているようです」

「ってことは――」

「はい。水の国に戻り、取り戻すとなると、やはり戦いは免れないでしょう。宝剣はその際必須となる。僕はお側でお守りすることは、不可能かと。実際戦ってみないと、わかりませんが……」

 雅の右拳が杜の脇腹を抉るように食い込む。

 この一撃で、互いの不平不満の言い合いは終止符となった。

 

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