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SF・ファンタジー・ホラー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第27話 離さないで

   

陰謀と悪意、そして信じたものの為、幼き王女は立ち上がる。
王女と王子の運命を駆ける王国ファンタジー。

「ルイス、私を離さないでね」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、来たるべき時の為に。

 

 
「一緒に逃げよう、プライン。皆で兵から逃げるのよ」
「…姫」
「お前達は僕に仕えている身だろ。簡単に諦めるな」
「…王子」

 私とルイスがプラインに手を差し伸べる。そんな私達のことを彼女は目を見開いて見つめると、涙を拭いた。
 彼女にこんな顔をさせてしまっているのは、私だ。私が泣くわけにはいかない。プラインもプランジットも失わない。絶対に、皆で逃げ切ってみせるのだ。カーネット軍から――――そして、叔父様から。

「まずはオールと会わなくちゃ」
「役所だったな?」
「はい。しかし、両殿下が町を動き回るのは危険かと思われます」

 年の離れた金髪の兄妹というだけでも目立つ。今、この騒ぎの中、子供である私達が役所まで辿り着くのは難しいだろう。だが、ここでじっとしていて待っているなんて出来ない。ピクシスをあの場から早く解放してあげたい。そして、休ませてあげたい。謝罪と感謝を伝えたい。

「もうこの町に私達が身を隠せる場所はないわ。それに、もうこれ以上プランジットを巻き込めない。もちろん、あなた達のことも」

 ピクシス以外にもう犠牲を出すものか。もう誰も失いたくない。

「こんなに早く、カーネット軍に僕達の居場所が知られてしまうとは思わなかった…」
「私達もそう思っておりました。無力な我等をお許し下さい」

 半年間、私達はプランジットで穏やかに過ごすことが出来た。その猶予はピクシスが命懸けでくれたもの。あまりにも短く、儚い。私とルイスは城から逃げたあの日から、安息とは無縁の生活を余儀なくされていた。だが、そんな中でも一時いっときの安らぎをくれた彼等には、感謝してもしきれない。無力だなんて、どうして思えようか。

「無力なのは、私です」

 彼等に縋ることしか出来ない。

「先程の悲鳴は聞こえていましたね? きっと、広場の方だわ…役所に行くにはどのみちあそこを通るしかない。行きましょう。また何かあったのかもしれません」

 私はそう言って、ルイスと手を繋いだ。私の言葉に二人は頷くと、路地を走りだす。

「ピクシスを早く眠らせてあげよう」
「――――うん」

 ルイスが私の耳元で小さくそう呟いた。その言葉に大きく頷いて、足に力を込める。

 私は、ルイスがいるから生きている。彼が望んでくれる限り、生きようと思える。私の為に、命を失った者がたくさんいるからだ。けれど、彼が窮地に陥ったら、私は躊躇いなく自分の命を差し出すだろう。彼がそれを拒もうと、他の誰がそれを止めようと、私は喜んで囮にでも何でもなる。
 

 

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