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エリカの花言葉 第4話 アジサイ《冷酷》 4

   

 夏休みが明けてから、どこか物思わし気な様子である恵里香を心配する洋平と弘行。
 ある日、級友である裕太と亮治が、恵里香が子役時代にヒロインを努めたドラマ『紫陽花の涙』で共演していた、女優の片山美奈子と出会い、恵里香の現状を尋ねられる。
 すると、片山美奈子によって過去に恵里香の身の回りで起きた事件が週刊誌に取り上げられ、恵里香が菖蒲町に越して来た理由や、抱えていた重苦が明るみになった。

 

 
 九月二八日(日)

 あれから一週間が経とうとしている日曜日、今日までに弘行は学校へ来ることが無い。洋平も教室の皆と蟠りが残るまま時間だけが過ぎた。
 携帯電話を持たぬ恵里香と弘行には直接の連絡がとれず、恵里香の自宅はマスコミが嗅ぎ付けて集っていることから、本人と会うこともできない。
 弘行の自宅はポストから溢れるほどのチラシが詰め込まれたままで、ドアに耳を当ててみたり、窓に掛かるカーテンの隙間から部屋の中を覗いてみたりしたが、夜逃げでもしたように人の気配を感じない。
 一時は学校にまでマスコミが来ていたが、学校側が警察に通報してからはその場所まで蝕まれることは無くなった。
 教室では恵里香の話題に触れる者もいなくなり、いつもであればマスコミが集れば野次に乗って騒ぎ出す裕太や亮治も、自分達の蒔いた種は毒であったことに気が付いたのか、これ以上に話題が膨らまぬことを願う日々を送っていた。
 陽子は恵里香を心配して洋平に近況を尋ねるが、彼女が求めるような情報を洋平は知らない。

 日曜日であるが今日は体育祭の日。菅村は二人が体育祭に参加できるように自宅を訪ねたりもしたが、結果は洋平と同じこと。
 二人のいない体育祭を洋平は鉄棒にブランと腕を掛けて見ていると、百メートル走にはポカンと空いているレーンがあり、組体操のピラミッドは練習の時よりも少し小さく見える。
 本来であれば、恵里香はこのような行事を人一倍喜んで取り組むのだろうが、きっと今日が体育祭のことなど忘れているだろう。
 椅子から立ち上がり応援の歓声で賑わう中、一年A組のグループだけは喝采の声は聞こえない。他の生徒たちの漲るエネルギーは、まるで一年A組から吸い取っているように、このクラスだけがどんよりとした雰囲気である。
 見学に飽きた洋平は、フラフラと無意識に歩いていると通用口に来ていた。

 

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