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SF・ファンタジー・ホラー

幻儚奇譚<3> 漆黒の犬

   

 幻儚の世界から電話がありました。
 なぜ森林太郎を小説に登場させたのだ、というイチャモンです。
 話を聞いているうちに気が付きました。
 もう一人、忘れていやしませんか、と言外に匂わせているのです。
 忘れていません、真打ちは、最後に登場してもらうつもりだったのです。
 こう説明したら、納得して電話が切れました。

 

 夏目金之助は、ノーフォーク州の田舎道を歩きながら考えた。
 知を働かせれば目処が立つ――。
 石が流れれば葉は沈む――。
 下宿暮らしは窮屈だ――。
 重い旅行カバンを抱えて歩いているので、考えも支離滅裂になる。
 わざわざノーフォーク州のクロマーくんだりまで来たことに、夏目金之助は、後悔を始めていた。

 夏目金之助は、将来を期待された国費留学生として、イギリスへ派遣された。
 英文学の研鑽を積む。
 これが目的であった。
 そして英文学の本場に身を置いたのである。
 ベオウルフに始まりシェークスピアを産んでいる英文学。
 その厚みと深さは、想像を絶するものであった。
 単なる物量だけの問題ではない。
 文化の違いも、肌で体感した。
 漢詩文の素養で育った人間が、英文学を本当に理解することが出来るのか。
 この疑問が、すぐに生まれたのである。
 ロンドンの街は、石造りである。
 空気は、煤煙の霧に埋まっている。
 江戸生まれで落語を趣味とする夏目金之助にとっては、耐えられない暗さであった。
 夏目金之助は、神経衰弱になってしまった。
 下宿に引きこもって、一歩も外へ出なくなったのである。
 下宿の女主人が心配して、医者を紹介した。
 夏目金之助は、ありったけの勇気を奮い起こして、部屋を出た。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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