大切な人

私は大学進学のため18歳で東京に出てきました。

慣れない一人暮らし戸惑っている時、隣に引っ越してきたのが、自称「保険のおばちゃん」山下澄子さんでした。

「ご飯食べにいらっしゃい」
「これ、帰省土産です」

そんな付き合いを重ねるうち、私には山下澄子さんに、16歳も年上ですが、秘かに恋愛感情が芽生えてきました。

それだけ年齢が違えば、相手にはされないものですが、世の中、いろいろ起こるものです。

是非、お読みください。

 

 
~出会い~
 

私は18歳の時、生まれ育った地方都市を離れ、東京の大学に進みました。

「東京は怖いところが多いから気を付けるんだよ。」

初めて親元を離れて一人暮らしを始める私に、母親は心配でたまらないといった顔で、何度も同じことを繰り返していました。

「こんにちは、このフロアーに越してきた飯田謙治です。」

結局、あれこれ迷った末、大学まで40分程の、静かな住宅街に小きれいな3階建てのワンルームマンションで暮らすことにし、今日はその挨拶回りです。

「皆さん、干渉されたくないようですよ。」

不動産会社で聞かされたように、ドアを開けてくれる人はいい方で、殆どがインターフォン越しに「分りました」と返事をくれるだけでした。

  東京はこんなものかな・・

私はそう思うと同時に、煩わしい近所付き合いをしなくて済むと、少しほっとしました。

4月、大学の授業が始まりましたが、私はなかなか友達が出来きませんでした。

「謙治は人見知りするのよね。」

子供の頃から、よく母親に言われていましたが、こうして一人暮らしをしてみると、そのことがよく分かりました。

こちらから挨拶をすればいいものを、「挨拶したら、こっちも挨拶すればいい」と、どうしても一歩引いて待ってしまうのです。

 
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