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ハートフル

大切な人

   2016年11月18日  

 
~通じた気持ち~
 

私は大学3年、21歳になっていました。

7月中旬、私はアルバイトの家庭教師を終え、午後10時過ぎに駅に降りました。

まだ、梅雨が明けきれず、しとしと雨が降り続き、暑さがじっとりと体にまとわりつく、鬱陶しい季節でした。

  早く帰って風呂に入りたいなあ・・
   
私が駅前の商店街を早歩きで抜けた時です。女性が20m程前を両手に袋を下げ、傘もささずに歩いているのが見えました。

  澄子さん・・

私は小走りに追かけました。

「澄子さんじゃない?どうしたんだよ、風邪、引いちゃうよ。」

振り向いた澄子さんは表情がありませんでした。

「ねえ、風邪、引いちゃうよ。」

私が傘を翳すと彼女は私を見上げ、そして、ぽつりと言いました。

「終わったのよ・・」
「えっ?」
「奥さんには勝てなかったの。離婚するからと言われて、本気で付き合っていたけど、奥さんが職場に乗り込んできて、私が先にちょっかい出したとか、泥棒猫だなんて言われて、もう散々。会社も辞めてきたの・・」

澄子さんの肩がぶるぶる震え出しました。

私は何も言えず、ただ、「帰ろうよ。」と声を掛けましたが、澄子さんはとうとう抑えきれず、その場に蹲って声を出して泣き出してしまいました。
 

 

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