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ハートフル

大切な人

   2016年11月18日  

 
~出発~
 

会社を辞めてしまった澄子さんはアメリカに行くことになりました。

私はお隣さんですから、引っ越しの手伝いに行きました。

そして、ほぼ片付けが終わった時、澄子さんはこんなことを言いました。

「勉強、勉強。37のおばさんだって勉強するのよ。謙治君も大学をしっかり勉強するのよ。」
「うん、分ったよ。」
「約束よ。ああ、それから、卒業したら、アメリカにいらっしゃい。結婚してあげるから、あ、これは冗談よ。あははは。」

そこには蹲って泣いていた姿はありません。いつもの元気な澄子さんに戻っていました。

出発の時、私は成田まで見送りに行きました。

「元気でね。いろいろとありがとう。」
「僕の方こそ、すっかりお世話になって、何もお返しが出来なくてごめんなさい。」
「そんなことないわよ。一番辛い時に助けてくれたのが、君よ。私は忘れない。」

澄子さんはそう言って僕の手を強く握ってくれました。

そして、いよいよチェックインする時間が来ました。

澄子さんは私を抱きしめてくれました。周りから見れば、おばが見送りに来た甥に最後の挨拶をしているように見えたでしょう。

「ねえ、あれ信じていいの?」

私は勇気を出して言いました。

  “アメリカにいらっしゃい。結婚してあげるから”

今なら、「冗談って言ったでしょう。」と言われたって、「やっぱり、冗談に決まっているよね。」と笑ってお返しできる。でも確かめないと一生後悔する、そう思ったからです。

 

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