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ハートフル

大切な人

   2016年11月18日  

 
~エピソード2~
 

「謙治は東京で寂しがっていないか?」

6月の終わり、私がどんな暮らしをしているのか心配になった母親が上京して来ました。

「お隣、どんな人?」
「いい人だよ。保険のセールスをしているんだって。自分で『保険のおばちゃん』って言ってるよ。」
「女なの?」

そう聞き返した母親の顔は曇っていました。

「ちょっとご挨拶に行ってくる。」

しかし、戻ってきた時には笑顔になっていました。

「ほんと、〝保険のおばちゃん〟ね。明るくていい人。」

澄子さんには言えませんが、誰もが振り返るような美人だったら、こうはならなかったと思います。

「じゃあ、お母さん、帰るから。澄子さんによろしくね。」

母親は安心して帰っていきました。

それからというもの、帰省する度、いや、仕送りの荷物を送ってくる時もそうでした。「これは澄子さんに渡しなさい。」と必ずお土産を持たされました。

「あらあら、こんなこと、しなくていいのに。」
澄子さんはそう言っていましたが、とても喜んでいました。

「謙治君、ご飯、食べにいらっしゃい。」

澄子さんも週末になると、度々そう言って夕食に誘ってくれました。

本当にいい人です。人見知り癖が抜けず、友達がなかなか出来なかった私が、東京で楽しく暮らせたのは、本当に彼女のお蔭です。

 

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