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エリカの花言葉 第5話 トリカブト《復讐》 1

   

 週刊誌の話題がほとぼりを冷ますと、恵里香も今まで通り学校へ通学するようになった。今は級友達とも和解して、以前のような学校生活を送っている。
 校舎裏の銀杏も黄色に染まり始めた頃、校内では秋の合唱祭に向けて、各クラスが放課後の練習に励んでいた。
 一年A組は、ピアノ伴奏を恵里香が務め、指揮者を弘行が務める。
「だからさぁ、嶋岡の指揮はデタラメなんだよ」
 ぶっきらぼうに指揮棒を振る弘行のことを亮治が茶化すと、教室に響いていた何処となくぎこちない歌声が、どっと笑い声に変わる。
「うるせぇ、おまえ達がハメたんじゃねぇかよ」
 合唱祭に向けて話し合いをしていた時のこと、秋の日向に心地よく眠りについていた弘行は、目を覚まして黒板を見ると、誰も立候補の無かったはずの指揮者の覧には、赤いチョークで自分の名前が書き込まれていた。
「いいじゃないか、どうせ音痴なんだから」
 洋平の言葉を聞いて皆が再び笑い出すと、弘行は「うるせぇ、うるせぇ」と言いながら、指揮棒をブンブンと振り回した。
 恵里香も母に対する心労は絶えないが、兄の保護司から現状報告の連絡があることにより、母も以前より精神的に安定しているので、学校では笑みを見せるようになっていた。
 放課後の練習が終わると、恵里香は皆に取り巻かれるようにして帰宅するのが、ここ最近の習間であった。
「ねぇ、毎日、毎日、皆でいいってばぁ」
 恵里香は微笑んだ口元とは裏腹に、少し困った様子の眼差しで皆を見る。
「そんなこと言って、杉浦に何かあったら、俺の責任だし」
 裕太はいつものようにおちゃらけるのではなく、恵里香の用心棒にでもなったように精悍な顔立ちをしている。
「そうよ。それに私が何をできるわけじゃないけど、皆でいれば少しは安全でしょ」
 陽子の言葉を聞くと、恵里香は心に受け止めていた『友の優しさ』という重荷を、一気に吐き出すような溜め息を吐いた。

 

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