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エリカの花言葉 第5話 トリカブト《復讐》 1

   

『アジサイノナミダ ツヅキノハジマリ』
「どういう意味だよ」食いつくように裕太はその文字を見る。
「紫陽花の涙は、確か…… 京子以外の家族が皆殺される…… それじゃあ」
 美奈子は洋平の言葉に対して、小さく頷いた。
「そう、彼は母親を殺す気なのよ」
 恵里香の兄が再び事件を起こすのは、今まで憶測の話であったが、その文を見て確信が付いた裕太は、「なんだよ! こんなの絶対じゃん! 早く警察に行った方がいいよ!」と騒ぎ出す。
「分かっているって! でも、彼が今、何処にいるのか分からないから。それよりも、早くエリカに連絡してちょうだい!」朝焼けの海辺のように落ち着いていた美奈子が、今度は荒波を立てるように慌て出す。
「そんなこと言っても、エリカは携帯も持ってないし……」
 洋平が話すと、美奈子は何かに呆れた顔をして、「あの子、売れっ子の子役だったのに、携帯電話も持ってないの? とにかくエリカに会ったら伝えてちょうだい、母親を家から出さないようにって。私はこのまま警察へ行ってくるから」と三人に言い告げて、その場を走り去った。

 扉の隙間から見せた白い手は、小麦粉を塗られた狼の手ではなかったのだと思いながら、去りゆく美奈子の後ろ姿を見届ける。
 その時に三人は、それが生きている彼女を見るのが最期になることを予測もしなかった。
 
 翌日の朝、テレビのニュースはどの番組をザッピングしても、片山美奈子が殺害されて犯人を捜索中という報道が流れていた。
 
 

≪つづく≫

 

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