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立ち枯れ 8

   

幸恵につく悪い虫、悟を陥れるため、柏木は策を講じた。
一方的で卑怯なその策略は図に当たり、悟は窮地に落とされる。

だが、もう一歩でとどめを刺せる、という段階にきて、部下の警官、柴崎がやって来た。

 

 薄目を開けて幸恵の様子を窺うと、青ざめた彼女は淡々と話す柏木と、自分の横にいる悟を、おろおろと見ていた。
 無理もない。彼女にしてみれば、親しくしていた御友達が犯罪者だったのだ、動揺しないわけはない。して当然だ。
 だがその気持ちは間違っている。同情は悟のためにもならない。彼は犯罪者、甘えを増長させるような優しさは無用にしたほうがいい。チラリと見た幸恵の表情を瞳に焼き付け、柏木はまた目を閉じて淡々とした口調に戻った。
「また、キミには弁護人選任権があり、弁護人を選任することが出来ます、金銭的な理由で私選弁護人雇えない場合は、国選弁護人を選任することも出来ます、詳しくは担当者に質問してください」
 悟に気を取り直す隙を与えないように話続けた柏木は、そこまで権利を諳んじてから、徐に目を開けた。暗い夜道に立ち尽くした悟は、自分の身に起きた出来事を頭の中で整理しきれず、呆然としている。幸恵も同様だ。
 横並びに並んだ幸恵と悟を見つめ、柏木はこれでいいと思った。
 いくらバカな女でもこれで悟に見切りをつけるだろう。犯罪者を思って待っていてもいいことなどない。それだけの価値がある男だというならまだしも、悟はしがないフリーターだ。
 フリーターと言えばまだ聞こえはいいが、要するに定職なしのロクデナシということだ。ついててやる利点はない。
「……以上、なにか他に聞きたいことは?」
 柏木は幸恵が悟を見限るモノと確信しながら無表情に悟を見返した。だが、柏木の期待と予想に反して、幸恵は傍らにいる悟の腕を握り、怒鳴った。
「なによ! 一方的過ぎるわ、柏木さん彼に恨みでもあるの?」
 恨みはない。ただ目障りなだけだ。
 悟など、そこに、幸恵の隣にいさえしなければ、なんの興味も湧かない小さな男だ。そう思ったが、当の幸恵がその悟を庇うのが気に食わない。
「失礼な物言いだね幸恵ちゃん、俺が恨みのなんのという個人的感情で動く男だとでも思ってるの?」
「そうじゃないけど! でもあんまりじゃない、もう少し悟くんの言い分も聞いてくれたって」
「もちろん聴くさ、署でジックリとね」
「そうじゃなくて、今ここで逮捕しなくてもって……ねえ、誤解かもしれないでしょ、そんな小さなモノ、どこかで紛れこんだのかも」
 必死で悟を庇おうとする幸恵がどこか滑稽に見えた。
 こんな非日常的なモノ、どこで紛れ込むというのだ。そんなことはありえない。これがここにあるということは、即ち悟が持っていたか、柏木自身が持っていたかの二つに一つだ。
 客観的に見て、柏木が持っているはずがなく、誰がどう考えても持っていたのは悟、もしくは、意義を申し立てている幸恵自身が持っていたということになる。
 幸恵は突然現れた柏木が、警察官だと知っていた。そして罪を逃れるために、自分の持っていた覚醒剤を咄嗟に悟のズボンのポケットへ入れ込んだという筋書きになる。だがさすがにそういう流れにはもって行かないだろし、そうなればやはり犯人は悟でしかありえない。
 
 
 

 

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