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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season16-8

   

 手をくださずにコメンテーターのひとりが死亡するという衝撃的な映像が全国ネットに流れてしまった。

 これは批評ではなく、信者が増加するのではないか、そう懸念がよぎる。

 だれもがその力の下で崇拝していたいからだ。

 人は弱く、多くの弱者が救いを求めすがるように頭を下げる。それがいま浅野教祖の預言と脅威たる力を目の当たりにして、視聴者などは畏怖する。

 もはや崇める神として証明されたかのように、実証してしまったのだ。

 だからといって手をくだしていないため、裁くことはできないのが日本の法律だ。

 そして放送はいったん中断されCMに切り替わったままだが、そのとき、教祖が神の声を聴いたのとは異なり、地上に舞い降りる堕天使の声がスタジオに響くのだった。

 それは、あの男の声が天から響く声だった。

 教祖は狼狽し、ついには取り乱すといった情けない姿を露見させた。肩を貸そうと五大信者の桐谷が近寄る。

 そして待ちにまったあのひとの登場…。
 
 

 事件はつぎつぎと明らかになっていく。

 

 氷室たちは探偵社用の車を走らせていた。

「まさか浅野と大池議員につながりがあるなんてな」運転する火守がいった。

「そうですか、権力についていないと、あういう宗教的な活動は制御がかかるし疑われやすい。敬遠の的ですからね、妥当なもんじゃないすか」後部座席の窓際に貼りつくようにしながら川上はいった。

「でも、よくこの一日だけでそこまで読み取れる材料がありましたね」火守は助手席にいる氷室を敬った。

「ほんとうですよ、おれはまだまだなにもつかんでなかった」川上は恥じるようにいった。

「そこが氷室くんの能力だろう。パズルのように組み合わせ、欠けたピースをも修復するほどの想像力、見事なのだよ」森谷がいった。

「火守くんと同種類の能力だが、そうだなぁ…、浅野教祖で例えるならわたしにも神の声が聴こえる。もっとも気高き声がね」氷室はご満悦のようにいった。

「さっき警視庁の政木警部からメールがありました。メールを読んでくれたそうです。本人も驚いているみたいだ。テレビの生放送の死刑執行。さすがにその放送は類をみないものだったようだ。やはり女か、ショッキングだったみたいのようだな」雲田がいった。

「彼女も、しょせんは乙女ということだ」氷室がいうと、その場は寒々となる。

 だれも返答はない。

 政木警部が乙女って…、とだれもが内在した疑問だった。

「たまには笑ってくれたまえ」氷室は冷えた車内を溶かそうとしていった。

 スマートフォンが震えた。「わたしだ、おっと政木警部からだ。むこうでも動きがあったようだね」

 氷室はおどけるようにたのしむように通話にでた。

 

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