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SF・ファンタジー・ホラー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第31話 重ねた姿と

   

陰謀と悪意、そして信じたものの為、幼き王女は立ち上がる。
王女と王子の運命を駆ける王国ファンタジー。

「泣かないよっ、泣かない」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、来たるべき時の為に。

 

 
「っ、横だ…横から来る! 揺れるぞおおおッ!!!」
「!?」

 エドガーの叫びを聞いて、ルイスが目を見開いた。そして素早く私の頭を抱えると、ぐっと身構える。
 次の瞬間、車体が激しく揺れた。

 ――――ガァアアアアンッ!!!

「っ、う、兄様あああっ」
「っく…!」

 一転するかと思ったが、何とか堪えたらしい。頭が揺さぶられたせいで、眩暈がする。私を抱えたまま、ルイスが顔を上げた。

「一体何が起きたんだ…!?」
「車に何かがぶつかって…」

 プラインの困惑したその声に、私も顔を上げて、車の外に目を向けた。そこには。その背にかかっている織物にはカーネットの紋章が刻まれている。真横から突進してきたその馬と衝突したのだろう。衝撃はかなりのものだったが、まだ車は使えそうだった。

「…この馬は、カーネットの軍馬ね」

 どうしてこんなところに一頭だけいるのだろう。その馬に乗っているはずの兵士も見当たらない。――――だが、これでわかった。
 近くに王国軍がいる。

「ご無事ですか、ルイス様」
「ああ、平気だ」

 そう言ったルイスの動きが一瞬だけ止まった。その様子に違和感を覚え、私は顔を上げる。そして、目を見開いた。

「に、兄様…血が…!」

 ルイスのこめかみ辺りから、血が垂れていた。口元を覆い、声を堪えた私を見て、ルイスは笑う。一筋垂れたそれを拭い、もう一度笑う。

「大丈夫だよ。大したことない」
「私を、庇ったの?」
「…泣かないで、レイシー」
「泣かないよっ、泣かない」

 泣いたりなんてするものか。これも私のせいだ。私が庇われるほど弱いからだ。だから、泣いたりなんてしない。もう、泣かない。

「ルイス様! もう車は使えそうにありませぬ」
「何だって? まだ壊れてはいないだろ?」
「…どうやら我々よりも、王国軍は戦術に長けていたようですな」

 エドガーが悔し気にそう言った。ルドウに手を引かれ、車を降りたところで、私は彼の異様な様子に気がつく。
 彼は、車を降りようとしない。そのまま、扉を閉めてしまった。

「エドガー…?」
「ルドウ、プライン。ルイス様と姫様を頼んだぞ」
「! …はい」
「行きましょう、王子」
「姫も、どうかお急ぎに」
「ま、待って。まさかエドガーを囮にする気!?」
「ッ、何を…何故…」
「生きている間に、姫様をお見せ頂けて感謝しております。ルイス様」

 その言葉を最後に車のエンジンをかけたエドガーを見て、ルイスが叫んだ。

「エドガー! 何のつもりだ、お前まで!」
「…今度こそ、生き抜いて下され。“坊ちゃま”」
「! エドガー!!」

 その柔らかい笑顔の意味は、私にもわかった。ルイスは唇を噛み締めると、走り出した車とは逆方向に足を進めた。私の手を取り、走る彼の横顔を、私は決して忘れはしない。
 

 

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