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SF・ファンタジー・ホラー

幻儚奇譚<4> 紫色の唇

   

 桃色の唇は、卒業式で「忘れないでね」と言います。
 紅色の唇は、ブランデーグラスを置いて、何も言わずに待っています。
 紫色の唇は、笑いながら、幻儚の世界へ誘います。

 

 気が付いたね。
 目が見えなくても、心配しなくていい。
 目隠し、をしてあるんだ。
 余計なものが見えて、また、ショックを起こされても困るからね。
 それに、目が見えない方が、集中できるだろう。
 集中して、思い出してもらいたいんだよ。
 我々に必要なことを。
 記憶がない、って?
 分かっているよ。
 君は、ショックで、記憶喪失になったんだ。
 思いがけないことを、たくさん体験したからね。
 記憶喪失にもなるさ。
 これから、君自身のことを、我々が知りたいことに関係する君の経験を、順番に話す。
 それで、記憶を取り戻してもらいたい。
 そして、我々が知りたいことを、教えて欲しいんだ。
 ああ、そうそう。
 君の脳の中を、少し、探らせてもらった。
 状況を知るには必要なことだった。
 君のことも知らなければならないからね。
 探ったのは、表面的な部分だけだよ。
 もっと深く探れば、我々が知りたいことも、分かったかも知れない。
 だが、失敗すれば、永久に失われてしまう。
 なにせ、人間の脳はデリケートだ。
 深層知覚は繊細だ。
 下手をして、永久に失われてしまったならば、損失は、計り知れない。
 そんな危険を冒すよりも、君自身に思い出してもらう方が、はるかに安全だからね。
 さあ、リラックスして、我々の話を聞いて、そして、思い出すんだ。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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