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ラブストーリー

輪廻転生ヒーロー 第3話「最初の友達になろう」

   

 ――災厄の降り注いだ世界を救い、<英雄の少女>人峰灯火はその後、少年の前から姿を消した――

 青春×純愛の現代ファンタジーラブストーリー
『輪廻転生ヒーロー』
【毎月 第4水曜日に更新】

「僕は、灯火ちゃんを生かす為なら、今度こそ全てを犠牲にするよ」

 

 
「灯火ちゃん――――そう…呼んでもいいかな?」
「…うん」

 彼女は少し考えてから、頷いた。

「ね、君の名前は?」
「…………」

 今の灯火は、僕の名前を覚えてはいない。そうわかりきっていた事実でも、彼女の言動一つ一つに心の奥が抉られていくような感覚に陥っていった。
 今日だけで、何度この拳を握り締めただろうか。

西城さいじょうあおいです。よろしく」
「西城葵……うん、素敵な名前。私は人峰灯火です。よろしくねっ、葵君」

 少し遅くなった自己紹介に、僕達は小さく笑い合う。すると、灯火から手が差し伸べられた。その意味を理解して、赤くなった僕の手を彼女は構わず握り、微笑んだ。

「…手、冷たいね」
「うん? …ああ、雨に濡れちゃったからかな」

 冷え切ってしまった彼女の手を握り返す。触れ合う手と手。雨の中、桜の花弁かべん舞うその世界だけは、僕の思い描いていた再会の景色と同じだった。

 記憶を失っているかつての英雄。時がずれている僕と灯火。どう考えても、過去の僕等のようには戻れない。だが、それでもよかった。もう二度と彼女が辛い思いをせずに、戦うことのない未来の為なら、僕は何だってよかった。

「葵君が私の“初めての友達”ね」
「…? 二年生にいないの? 同じクラスだった人とか…」
「だって私、ほとんど学校に来ていなかったから」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、僕と同じ新入生みたいなものじゃないか」
「ええ? そうかなぁ。ふふっ、そうかもね?」

 ――――可愛い。
 灯火の視線から逃れるように顔を背けた。

「! あっ、もうホームルーム始まってるよ!? 急がなきゃ皆帰っちゃう…!」
「えっ? 入学初日からそれは嫌だな…」

 先程とある少年に睨まれたことを思い出した。彼のあの目が少し気になった。まるで、あれは――――“戦っていた時の灯火と同じ目”。

「行こ! 葵君!」
「! うわっ…ちょっと! いきなり走ったら危ないよ、灯火ちゃんッ」
「だって急がないと!」
「…ハハッ、全くもう…君は子供みたいだね」

 校舎へ向かい、降り続く雨の中、手を繋いで走る僕と灯火。僅かな距離だ。それでも、こうしていると思い出す。幼い頃、通り雨の中、手を繋いで家まで走った日のことを――――。他愛もない日常だ。失った僕等の日々を、これから取り戻していく。そう僕は、誓った。
 

 

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