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ダストドール第6話VS坂

   

世は再びプロレスブーム。

プロレスファンの子供達と過ごす時間を大切にする凡内。日本で最も有名なレスラー坂を避け続ける理由はそこにあった。

 

試合会場の周りでは、グッズ売り場などの屋台が広がり、お祭り状態となっていた。その日は龍日本プロレスと超日本プロレスの団体戦があり、客数は通常の倍以上であった。

「ちょっと細岡さん!手伝ってくださいよ!ずっと食べてるじゃないスか!」

「仕方ないだろ!近くでフランクフルト売ってんだから」

凡内、細岡、軽沢は、三人で一つのテントを担当し、自分達のグッズを自ら売り出すサービスをいつも行っていた。

「ダストドールのフィギュア!クオリティが凄すぎるからちょっと高いけど、一生大切にできる品だよー」

中でも凡内は、一番張り切っていた。子供達との握手、サイン、写真撮影など全てを受けており、さらには、

「僕、飲み物持ってるよ」

「ナイス!行くぜ乳酸菌アロー!」

飲み物を持った子供と、自分が大好きな乳酸菌飲料で乾杯するという、なんとも変わったサービスもあった。凡内がそんなサービスを始めた理由。それは、凡内は決してグッズを買って欲しいわけではなく、グッズを買えばサービスが待っているという概念が嫌いであるからだ。中にはきっと貧しい家庭の子供達もいる。凡内は、金持ちの後ろに隠れているかもしれない子供を作りたくなかったのだ。そこまでサービスにこだわる理由を記者に問われた時に凡内は、

「プロレスが好きだから」

と、純粋に答えた。今、バラエティー番組に出演するレスラーは多く存在するが、凡内は絶対にそれを断っていた。自分はプロレスラーであり、レスラーである自分を知って見にきてくれた子供達と楽しく過ごしたいからだと、凡内は思っていた。

「無駄な人気が出たらやってる意味がないから。プロレスから勇気を学ぶ子。僕はそんな子供達を刺激したいだけ」

凡内が坂を避け続ける一番の理由が、実はそこにあった。坂という誰もが知るレスラーの光に照らされ、無駄に名前だけが先行して広まることを、凡内は避けていた。

「人気者になっても、ちゃんとここに来てよ!」

以前よりもずっと騒がしくなった凡内達のテントに来た子供が言った。

「当たり前だろ。俺はこの瞬間が一番好きでプロレスやってんだから」

そんな時、突然激しいギター音が鳴り響き、辺りがざわつき始めた。

 

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