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ダストドール第5話VS芦田

   

世は再びプロレスブーム。

長年トップレスラーとして君臨してきた芦田の立場を、真っ向から否定する凡内。そして、ついに因縁のカードが組まれた。

 

運命のゴングが鳴った。先に出たのは細岡と吉田。互いが組手を取ろうとした瞬間、細岡は素早く吉田の足元に滑り込み、吉田の右膝を固めた。いきなり見せた細岡に観客は沸いた。決まり具合も良く、吉田は苦悶の表情を浮かべながら叫んでいた為、芦田が慌ててカットに入る。観客はブーイングを飛ばした。

「タッグマッチで良かったな。もっとブーイングを起こしてやろうか?」

関節技を解いた細岡は先に立ち上がると、吉田にそう呟いた。細岡の動きを警戒しながらゆっくりと立ち上がろうとする吉田に、細岡はまた飛び込んでいく。そして今度は左足首を捕らえた。自らの体を回転させ、吉田をロープから遠ざけると、激しく体を揺らしながら固めた。試合開始直後、続けてカットに入ることは不細工であり、王道を行く芦田と吉田からすればそれは邪道の行為。ここは吉田が自力でロープまでたどり着くべきであったが、吉田の表情を見た芦田はたまらずカットに入った。

「ブー!ブー!何やってんだよー!」

芦田、吉田組にブーイングが飛ぶ中、細岡は技を解き、凡内にタッチした。すると細岡に拍手が起こった。細岡はそれに対し首を振り、

「ただの偶然だよ、偶然」

と、運良くそうなったのだと言った。しかし、細岡をよく知るファンや関係者にはわかっていた。細岡は世界のリングを旅したレスラー。その脳と肉体には世界中のプロレスが染み込んでいて、それを自然と引き出すセンスが細岡にはあるのだ。
凡内がリングに入ると、吉田は足を抑えながら転がるように芦田にタッチし、芦田もリングに入った。芦田は、ただ立ち尽くし自分を睨みつける凡内の顔を思いきり張る。バチンと乾いた音が会場に響いた。凡内は半笑いで少し首を傾げ、全く効いていないという仕草を見せた。すると、芦田は、連続で凡内の顔を張った。

「クソジジィ、引退しろ」

凡内は反撃することもなく、芦田を指差してそう言い放った。観客には凡内が何を言ったのかはわからなかったが、明らかに挑発するその態度に大いに沸いた。

「リング上ではお前は何をやっても無駄。権力の椅子にすがりついてるだけのクソジジィが」

凡内は何度も顔を張られながらも、暴言を吐き続けた。

「過去の栄光?いったいいつの話を何十年も続けてんだよ」

凡内はようやく芦田の張り手をかわすと、顔面にエルボーを叩き込んだ。そして、倒れた芦田の顔面を踏みつけながら、

「こいつみたいな奴が死ねば、日本の景気が回復していくぞ」

と、観客達に叫んだ。会場内は芦田ファンが凡内に飛ばすブーイングと、凡内ファンの歓声に包まれていた。
そして中盤、吉田が細岡を追い詰めていた。雪崩式ブレーンバスターを食らった細岡は、後頭部を押さえながら逃げるように場外に転げ落ちた。本来は場外戦を好まない吉田だが、その日はしつこく細岡を追い、さらなるダメージを与えようとリング外に降りた。しかし、それが誤算であった。

「死ねっ!」

細岡は場外に落ちた時にサイコドールに変身していた。リング下に隠されていた小道具を取り出し、反則攻撃で吉田に襲いかかった。芦田が急いで救出に向かおうとしたが、芦田には凡内のジャンピングニーパットが炸裂する。

「行くぜ!ダストドール!」

凡内はダストドールに変身すると、芦田に激しい打撃のラッシュを見舞う。芦田はリング中央で倒れた。
場外ではサイコドールが芦田の旗で吉田の首を締めていた。しかし、互いにタッチを行っていない為、試合の権利があるのはサイコドールと吉田。ダストドールは倒れた芦田を場外に蹴り落とすと、

「細岡、決めちゃって」

と、場外で吉田を血祭りに上げるサイコドールにそう言った。サイコドールは吉田をリングに投げ入れると、なかなか立ち上がれない吉田を観客に見せしめた。吉田がフラフラになりながらようやく立ち上がると、サイコドールは自らの喉元を探るように触る。

「この動きはまさか!」

実況がそう言った瞬間であった。サイコドールは吉田の顔面に紫色の毒霧を見舞い、吉田の視界を奪った。そして、再び倒れた吉田をラマヒストルというメキシコの技で固めると、見事スリーカウントを奪った。

 

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