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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season16-9

   

 雲田は教団の一人ひとりを詳しく調べた。とくに経歴をだ。桐谷、家族持ちでシステムエンジニアとして教団のセキュリティや宣伝に腕を振るっている。

 浅野が教団のサーバーにアクセスされたことに激高する。それだけ桐谷のスキルを信じ込んでいたのだ。

 そこには教団のありとあらゆる預言リストが存在していた。つまりが教団にとって活動を阻む恐れのある人物を殺害するためのリストだった。

 それは評論家だけではなく、警察やメディアも取り上げてないところで、心臓発作の自然死で死亡した人物も数名いることがわかった。

 警察が躍起になって探している証拠というのがそれになる。それを暴露したらもやは言い逃れができない代物。
 
 

 御影が推理を語りはじめた。昨夜のできごとのことや、強気で浅野教祖を罵って預言されることの畏怖をなんとも思わないほどに、卑屈にいう。

 そこまでの態度ができるのは、ある隠し玉があるからだ。

 それはキリストが磔になった起因でもある裏切り者を指す。

 ユダ。

 

「あなたたちのことは調べさせてもらった。とくに経歴をな」雲田はいった。

 桐谷は目の色を変えた。

 火守、川上、森谷、そして氷室は知っていた。眠らずにずっと集中力を欠けることなく淡々と黙々とパソコン画面とにらめっこしていた雲田は、教団の一人ひとりを調査していた。

 桐谷 末広(きりや すえひろ 47歳)。仕事も順調にいって家庭も築き、息子と娘も立派に成長していた。

 だが、そんな暮らしにも影が差す。子どもたちと妻は三人で勝手に旅行にいったりと、夫だけを爪弾きにし家庭内無視をするようになった。

 ただの働き蟻になって家族の縁の下の力持ちとしてずっとその位置におかせているだけで自由奔放に暮らす家族を憎らしくなった。

 神も仏もないのか、が末広の口癖だった。

 そこに教祖の浅野が書籍をだしていた。「救いがほしくば読め」という本に、その中の一節に「家族についての不満、神のご加護があるかどうか」という逸話を読んだ。

 やはり主人が一番偉く慕われる存在でなければならない。縁の下だけで終わるのでは化石にひとしい。

 うっぷんが溜まって石の上に三年、そろそろ頃合いだった。日本進出してきた三年前に浅野会に入信した末広だった。

 システムエンジニアとして腕を振るっていた。主にセキュリティや宣伝のためのホームページを作成して更新していた。

 五大信者の最後のひとりとなって浅野会の中心的になったのである。

「このおれとシステムで戦うことになろうとはな。だが、セキュリティを破るのは至難だった。なんせ、政治家とのやりとりや様々な預言対象となっているリストが存在していた。そいつらを事故死で偽装して殺している」雲田はいった。そして手を翳す。「この用紙の束は、八王子のアジトにある教団のサーバーを探ったものだ。言い逃れはできない」

 とんでもないスクープだ。そんなものが存在しているのであれば、教団を追い込む絶好の材料だ。

 警察が探し求めている証拠というやつだ。

 浅野は顔色が変わった。「そんなバカな、教団のサーバーにアクセスできただと…、ありえない、どういうことだきさま!」

 桐谷の胸倉をつかむ教祖だった。逆恨みするかのような鋭い野獣のような目だった。

 もはや人間臭さがでているこの男は、教祖ではない。

「ぜったいに侵入なんてありえない。まちがいないんですよ。信じてください」桐谷は訴えかけるようにいった。

「じゃ、なぜ、秘密が暴露されるんだ…」

 言い争っているあいだは、スタッフやタレントは蚊帳の外になっていた。

 森谷が信者の背後に忍び寄り、水桐と大地を救出した。

「こっちだ」森谷は囁いた。「まだこれからなにかあるかもしれないのだよ。いまのうちに信者から離れておこう」

 水桐と大地は頷いて静かに画面からフレームアウトするかのように後ずさりして森谷についていった。

 

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