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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第33話 生きていてと願うこと

   

陰謀と悪意、そして信じたものの為、幼き王女は立ち上がる。
王女と王子の運命を駆ける王国ファンタジー。

「だから…だから私達は、一生一緒にいると誓ったんだよ」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

今は遠い記憶の中で、笑う。

 

 甘かった。全て、私の弱さが原因だ。覚悟すらろくに出来ていなかった、私のせい。プラインのあんな顔、見たくなんてなかった。二人の若い夫婦の未来を奪って、それでも尚、生き続けようとしている私は、最低だ。

 私は一体、何をどこで間違えてしまったのだろう。彼等にあのような選択をさせてしまったのは、他でもない私達。優しい彼等にその道をいてしまったのは、私達なのだ。一体どれだけ後悔を重ねて、涙を流し、絶望を見れば、許してもらえるのだろうか。私とルイスの存在がこれだけの犠牲を生んでしまったと言うのなら、何に許しを乞えばいい――――。これ以上、どう抗えと言うのだ。

 自分の運命と戦うには、犠牲がいる。これからも希望を捨てず、敵と――――叔父様と戦う道を行けば、その時はきっと、今以上に失っていく。城での優しい思い出、プランジットでの穏やかな日々、この次は一体何を失うのか。そう考えるだけで震えが起こる。

 ルイスは、今回の事件で多くの大切なものを失った。城から出て半年以上、彼は失い続けているのだ。その度に負う傷は、これからも心で深く根を張っていくのだろう。私では、その根を枯らしてあげることは出来ないのかもしれない。それでも、それでも私は、まだ彼の傍にいたい。許されなくても、他の誰がそれを否定しても、私はルイスの傍で生きていきたいのだ。どれだけ私達の大切なものが踏みにじられようとも、その意思だけは変わらなかった。

 これから私とルイスは、再びどこか別の場所で身を隠す日々を始める。そこにも臣下がいるのだろう。そして、今日みたいな戦いがいずれまた起きる。その時、私達は――――まだ“戦う意思”を持っていられるだろうか。

***

 ――――ルドウは、列車の個室を用意してくれていた。事前に準備していたのか、その部屋には私達の着替えと、数日身を隠していられるだけの十分なお金が用意されていた。それを手にして、私は思わず彼等の名を心で呼んだ。
 ――――大丈夫。きっと、無事でいる。約束したじゃないか、プラインと。だから、大丈夫。
 そう自分に言い聞かせることでしか、意識を保っていられそうになかった。まだ、彼女の手の温もりが残っているようで、私は自分の両手を茫然と見つめる。

「エリザ」
「…ルイス」
「…おいで。座ろう」
「…はい…」

 私の方を見向きもせずにそう言った彼は、疲弊しきっていた。王国兵と戦っていた時の感覚が抜けないのか、時折目を大きく見開いては、力が抜けたかのように息を吐いたりしていた。私はそんな彼にかける言葉が思いつかず、黙って言う通りに座ることにした。拳を握り締めて、その隣に腰を下ろす。
 ルイスにはもう、心の余裕なんてなかった。何人もの臣下を失い、正気でいられるはずもない。彼は、また感情を殺したのだろう。大切なものを失う度に、ルイスはいつもそうしてきた。母様が死んだ時もそうだった。父様がいなくなった時もそうだった。
 

 

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