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エリカの花言葉 最終話 シオン《追憶~君を忘れない》 2

   

 洋平が亡くなり弘行も警察に捕まってしまうと、恵里香も事件の悲しみから学校へ来れなくなっていた。
 三人の抜けた一年A組は合唱コンクールへの出場を辞退しようと言い出すが、菅村だけは意見に反対。
 生徒達は弘行の罪について話し合うと、ならば弘行の罪を軽くするための嘆願書を提出しようと案が出る。それを合唱祭にて訴え掛け署名を集めようと動き始めた。

 

 その日の夕方、陽子は裕太と亮治を四角四面の公園へ呼び出した。陽子が来た頃には二人は既にベンチに座り、何をしているわけでもなく待っている。
「何だよ話って。先生に何を言われたか知らないけど、俺は合唱祭に出ないぞ」
 裕太は放課後の流れで陽子が何を言いたいかは大体分かっている様子。
「私も、あんた達が帰るまではそう思っていた。でも今は違うの」

 陽子は二人が帰った後の話を伝えると、二人は断りづらい話を持ち出されて、丸め込まれている気分になる。
 弘行の為にと言われれば嫌とは言えないが、あれだけ突っ張った建前から自尊心が邪魔をする。
「だったら合唱なんかなくても、署名だけ頼めばいいだろ。そんなチャリティーみたいなことしてどうするんだよ」
「そうだよ、先生も狡いよな。合唱祭に出させる為に嶋岡をダシに使って」
「大体おかしな話だろ?合唱祭に出ないと先生は頼んでくれないなんて、先生にとって嶋岡はそんな奴なのかよ」
「あの人も結局、自分の建前が大切なんだよ。問題ばかりのクラスが合唱祭も出ませんなんて恰好つかないもんな」
 この二人を説得するのは安易ではないと初めから思っていた陽子だが、その態度を目の当たりにすれば、投げ付けたくなるような苛立ちが募る。
「あんた達、全然似てない……」
「何がだよ」
「教室で私達のこと、あの三人に似ているって揶揄われた……あんた達と一緒だなんて恥ずかしかったけど、半分嬉しかったよ。だってあの三人見ていて羨ましかったもん……でも、あんた達は何?もしも逆の立場だったら、河村君と嶋岡君はあんた達と同じことを言っていたと思う?絶対に違うよ!皆であいつらを助けようって言ってるよ」
 この公園は家やアパートに囲まれているから、もしもあの窓から人が顔を出せば自分達が女を泣かしているように思われそうだけど、こんなに大声で攻めたてられていれば誤解もされないだろう……そんなことを二人は連想しながら、陽子が悲しみと怒り織り交ぜて話す姿を見ていると、意地を張っていた二人の心に突き刺さる。
 そうだ、あいつ等と比べればいつだって自分達はちっぽけだった。今度だって結局、嶋岡を止めることが出来ぬまま事件が起きて、起きてしまえば自分達が被害者のように振舞っていた。
 中学生なんてそんなもんだ……なんて気持ちもあったのだろう。しかし、あの二人はいつも恵里香のことに一生懸命向き合い、恵里香もあの二人に向き合っていた。あの三人は自分達に無いものを沢山持っていた。
 誰もがそうだ。綺麗事に憧れて、それを綺麗に思いながらも実際に行うことはない。だけどあの三人はいつも綺麗事の塊みたいな人間だった。その姿が羨ましくて、それに憧れていた。
「俺等は全然似てねぇよ。嶋岡も河村も、あの二人は格好良すぎるんだ」
「でも、おまえは似ていると思うぜ。杉浦そっくりだ」
 陽子はきょとんとした表情の後に笑顔を見せて、「私のことを、おまえって呼ぶな」と話す。
 それはあえて真似た言葉であるが、裕太が、「ほら、やっぱり似ているや」と話せば、後は何を言わずとも和解することができた。

 その話しを易々と受け入れないのは恵里香の方であった。
 恵里香は母が入院すると、家庭科教師である桜井加奈子の家で一時的に引き取られていた。
 事件が噂になると自宅には洋平の母が火を点けようとしていただけでなく、他区域の中学生や高校生が殺人現場だと言って面白半分に見物に来ては、窓に石を投げたり、『人殺し』と書いた手紙をポストに入れたりと、中学一年生の女子が暮らしていられるような環境でない。

 

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