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恋愛・ラブコメ

ひねくれ俺たちの青春シャウト 4

   

新入生を歓迎する花見の中で、澤崎は、実はモテ要素を持っているのではないかと指摘される。しかしそれには酒の力が必要だった。

叫部に入部が決定し、過去を振り返りながら考える。澤崎と飲酒の単純で、それでいて無視のできない関係は、今に始まったものではなかった――。

 

「どうしたんすか先輩たち」
 とりあえず聞いてみる。頭が回っていないのでそれくらいしか行動の選択肢がなかったのだ。
「澤崎玖炉……」
「なんでいきなりフルネームなんすか部長……」
 なんだか怖いことを言われそうだ。暴力を伴いそうな雰囲気すらある。この状況を素面状態の俺が直面していたら恐らく不安のあまり失禁するか泡を吹くくらいのことはしていただろう。
 それほどに俺は臆病なのだ。
「――お前は、ほんとにモテないのか?」
「……え?」
 思わずポカンとしてしまう。この人、今なんて言った? モテないのか? だと?
 彼女がいたことすらないこの俺に対し、本当モテないのか? って、どういうことなんだそれは。詳しく聞かねばならぬ。酔ってるとか言ってる場合じゃない。今から俺は素面だ。理性バリバリだ。
「だよな、俺も思ったよ。澤崎お前モテるぞたぶん」
 イケメン代表である西条先輩も深々と首肯する。
 一体どうしたと言うのだ。
 まさか、俺にもモテ期というやつが到来したとでも言うのか。モテ期って彼女ができたり、告白されたりして到来するもんじゃないのか。なんだこの異質なモテ期到来は。いやそもそもモテ期は到来しているのか?
「ちょっとちょっと! 先輩たちどうしちゃったんですか! こんなストーカー気質の男がモテるなんて戯言抜かすなんて! 先輩たちらしくないですよ! 人間じゃないですよ! 人外ですよ!」
 お前はちょっと黙ってろ! 俺は栄えある先輩たちの忌憚の無い意見が聞きたいんだよ。
「夢見光。お前が一番良くわかってると思ったんだけどな。わからないか? 酒を飲む以前の澤崎と飲んだ後の澤崎。全然違うだろう」
「そ、それは……ただ酔っ払ってるだけじゃないですか!」
「まあその通りだ。だけどな、初対面の人がこんなにいる中で、ちょっと酒を飲んだくらいで変われる人間はそういないぞ。それはつまり、酒は軽いエンジンになっているだけで、ガソリンになっているだけで、こいつの本質を覆っているものは案外薄い」
「それはまあたしかにそうですけど……言いたいことをフィルター通さずに言ってるだけじゃないですかこのストーカーは!」
 もう完全にストーカーと呼ばれている。
 まあそれはいいとして、霧間先輩の言う通り、たしかに俺は酒を飲むと初対面だろうがお偉いさんだろうが構わず言いたいことが言えてしまうのだ。これは自分の長所でもあり、場合によっては短所でもあるとは思っていたのだが、それがモテることにどう繋がるというのだろうか。全くわからん。
「だからな。そういう要素が全部いい具合に集まれば【モテ】になるんだよ」
「ええ……全然わかんないですよ! 頭こんがらがります! こんがらがってます!」
「光ちゃん。ミミ先輩の言ってることわからない? 誰に対しても心から思っていることを迷わず言える。そういう澤崎くんならモテるっていうことなんだよ。たぶんね」
「ちょっと待ってください! 酔っ払ったバージョンの俺ってモテ要素あるんですか! そういうことなんですか!」
「落ち着きな澤崎。焦る必要はない。酔っ払って言いたいこと言ってるだけでモテるわけがない。それならそこらへんの酔っ払いは全員モテてることになる。そんな世の中気持ち悪すぎるだろ? まあそうだな……そっから先は素面のとき考えてみろ」
 なるほど。霧間先輩、説得力が半端じゃないぞ……。言っていることはまだ完全には理解できていなかったけど、とりあえず希望のようなもの、希望の光のようなものが見えてきたような気がする。
 言われてみれば、熱血系の男子はモテると良く聞くしな。それに似たニュアンスなのかもしれない。しかし、酒の力が俺にこうもプラス要素を与えてくれるとは思っもみなかった。
 てことはつまり、大学生といえば酒、酒といえばモテる。という俺のために作られたんじゃないかと疑ってしまうような方程式が成立……。
 俺はこれからモテるかもしれないということだ!
「で、モテる澤崎くん! 君は叫部に入部してくれるのかね!」
「もちろんですよ次郎先輩!」
「次郎じゃない! 朗次だ!」
 とまあいとも簡単に入部が決定してしまったわけだが、他に入るサークルもないしまあ良いだろう。なんせ俺はモテるのだからな。
 まあそれは関係ないんだけど、とりあえず入っておいて損はなさそうだ。帰宅部よりはマシ。これ絶対。
「光ちゃんはどうするの?」
 三木林先輩の一言で全員が夢見光へと視線を向ける。
「んっ、ん~……入ります……」
「よしきたああああああ!」
 小沼先輩が上半身裸になって踊り狂っている。俺もそこそこに酔っ払っているので参加したかったが、今後の大学生活で酔うたび裸になっているといつかこの先輩のような立ち位置になってしまうかもしれないことを考慮してやめておいた。
「おい夢見。不甲斐無い返事だったがそれで大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ霧間先輩。なんとなくここの空気好きですし、里さんもいるんで安心です」
「そうか、じゃあこれからよろしく! というわけで、今夜は飲み明かすぞ野郎ども!」
 とても女の先輩とは思えない勢いだ……。
 でも嫌いじゃないぜ! こういうの!
「ところで先輩。ひとつ聞いておきたいことがあるんですけど」
 危ない危ない。重要なことを忘れていた。このサークルの雰囲気やらは理解できたけれど、もっと最初に知っておくべきことを教えてもらっていなかった。
「なんだ? なんでも言ってみろ」
「叫部の名前の由来ってなんなんですか?」
「はっはっは。なんだそんなことか。いいぞ、教えてやろう」
 なんだこの不敵な笑いは……。何か嫌な予感がしなくもないぞ……。
 

 

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