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恋愛・ラブコメ

ひねくれ俺たちの青春シャウト 2

   

最低のスタートを切ってしまった澤崎。しかしそこに差し込んできたのが、サークルという希望の光だった。

物語の根幹となるサークルとの出会いに、澤崎は大袈裟過ぎる覚悟で出陣する――。

 

 翌日、今日から授業が始まる。俺の大学生活がどうなるのか、それを決定付ける重要な日が訪れたってわけだ。
 この日にヘマをやらかすわけにはいかないと気合いを入れ、髪型をいつもより丁寧にセット(ワックスを通常より多めにつけただけ)し、自分の頬を2発ほど両手でパチンと鳴らせて準備完了。
 そして玄関の鏡の前で最終チェック。俺という男がどのように写っているのか、俺はおそるおそる確かめる――。
 うん、何も変わってねえ! しかし努力はした! 一片の悔いなし!
 と、それだけ用意周到にしておいて何も恐れることはないと決め込んだところで、玄関を開ける前に妙な寒気が体中を駆け巡ったのだ。
 おいおい、なんなんだこの悪寒は。今の完全無欠状態の俺には何の抜かりもないはずだぜ。
 ましてや悪寒を感じる理由なんてないはずだ。外部的要因があろうと、今の俺に影響を与えることはできない!
 そう気合いを入れ直し、元気良く鼻歌でも歌ってやろうかというノリで玄関を開けた瞬間――
 悪寒の原因がそこに立っていた――。
「俺が何をしたって言うんだ!」
「何よいきなり。別に怒ってないわよ昨日のことなんて。あれはまあ……お互い様だったしね」
 そう言って可愛く首を傾げられても、お前はもう俺の中で完全に恐怖の対象なわけなんだが……。
 そう。玄関の前に立っていたのは昨日の少女、いや、少女じゃなかったんだよな……。むしろ同級生だったんだけど――その夢見光だったのである。
「何か用でもあんのか? 俺はこれから人生を決める重大な旅に出かけるんだ。邪魔をしないでくれたまえ」
「あんた大学から家近い?」
 無視をして自分の話を続ける女はたいてい腹黒い、と高校時代のイケメンな友達が言っていた。
 この腹黒女め!
 そんなことを考えていたのが顔に出てしまっていたのか、夢見光は怪訝な表情を浮かべる。俺は暴力を恐れ、すぐに返答した。
「……徒歩20分だけど、それがどうかしたのか」
「やーっぱり! あたしもそこ、入学したのよ」
「あの……もうノリ突っ込みする元気とかないんですが……」
 折角の気合いが台無しになっちまったよ。こんな妄言しか吐かない女にやっぱ彼氏なんてできるわけねーよ。
「いやいや突っ込むところないですから! あたしとあんた、同じ大学なの! ここから徒歩20分の大学なんて他にないんだから!」
 ほーほー、同じ大学ね。なるほど――
「断る!」
「黙れ! いいから登校するよ! 1年生は語学が1限目からあるでしょ! 初日から遅刻とか生意気なことしたらできる友達もできなくなっちゃうよ!」
 ……って、なんかマジっぽいな……。同じ大学で同じアパート、そこだけ抜粋してみれば運命の出会いだとかそんな風に言えなくもなさそうだけどさあ、相手がこいつだとなると、むしろ不幸ですよこれ。
「で、大学が同じだったとしても、なんで俺とお前が一緒に登校しなきゃいけないんだよ。もし周りから彼女だと思われてみろ。モテるもんもモテなくなるだろ」
 という懸念がある。それだけは絶対に犯してはいけないミスだ。
「絶対大丈夫だから安心して。友達できたらあんたなんかそっこう見捨ててやるから」
 こえええ。女って生き物はこれだからなー。
 まあ、そう言われると悲しくなるっていうかいたたまれなくなるっていうか。人間って生き物はさ、ひとつひとつの出会いを大切にするべきだと思うんだ。それが例えどんな妄言勘違い女(しかも見た目は中学生)だとしても。
 人には人の価値観ってのが各々にあってだな、いつそれが覆るかわからない。人間の細胞は日々変化しているんだ。もしかしたら俺がこいつのことを素敵な女の子だと認識する日が来るかもしれない。うむ、来ないとは言い切れない。
 うーんまあ、簡潔に言うとだな――
「見捨てるのは断る!」

 まあそういうわけで、俺は晴れて、この大都会に来て初の友達をゲットしたわけだ――と、そう簡単にいくわけもなく、ツンデレなのかなんなのか知らんが、大学に着くなり、お前とは無関係だ、みたいな顔をしてどこかへ消え去りやがった。
 本当につくづく思う。女子ってめんどくさいよな……。何考えて生きてるのか全然わかんねーもん。
 そんなことを思案しながらの1限目。
 驚くことに、ほとんどのやつが友達と授業を受けているのだ。そりゃあ何人かは1人で寂しそうにしているが、そいつらは決まってモテなさそう。

 

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