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エリカの花言葉 最終話 シオン《追憶~君を忘れない》 3

   

 洋平が亡くなり弘行も警察に捕まってしまうと、恵里香も事件の悲しみから学校へ来れなくなっていた。
 三人の抜けた一年A組は合唱コンクールへの出場を辞退しようと言い出すが、菅村だけは意見に反対。
 生徒達は弘行の罪について話し合うと、ならば弘行の罪を軽くするための嘆願書を提出しようと案が出る。それを合唱祭にて訴え掛け署名を集めようと動き始めた。

 

 合唱コンクールの当日、校門には父兄の集まりには見えぬ人々の群れができていた。
「あれ……何ですか?」桜井は職員室の窓から校門を眺めて、その様子を他の教師たちに問い掛ける。
「週刊誌だよ、週刊誌!また余計な記事が週刊誌に書かれたんだよ!」

 教室では週刊誌を手にした裕太が、「おい、大変!大変だ!」と言いながら、慌ただしく教室に入って来た。
 裕太は週刊誌の一面を陽子の机の上に開くと、表題に、『杉浦恵里香、涙の訴え』と書かれた記事を見せる。
「ちょっと、何これ」と言いながら陽子が雑誌を手に取ると、他の生徒達もざわざわと集まりだす。

『杉浦恵里香の兄を中学一年生の少年が殺害した事件から二週間が経つ。犯行の理由としては杉浦恵里香の兄、杉浦陽一(一九)が、A少年の友人である河村洋平君(一三)を殺害したことへの復讐だと言われているが、杉浦陽一が死亡していることから確固たる証拠が無ければA少年の犯行理由も立証されない。しかし杉浦陽一は事件当日に実の母を監禁していたことや、片山美奈子さん(一七)の殺害事件に関しても、杉浦陽一と片山美奈子はSNSを通じて繋がっていたことが判明している。杉浦陽一がSNSサイトに投稿していた内容は二点の事件と関連性が高く、河村洋平君の殺害と同一犯であるのには間違いないだろう。』

 記事の内容は、洋平と弘行が恵里香と同じ学校の級友であり、非常に仲が良かったことや、恵里香の兄が父親を殺害した時、本来は母が狙いであったこと。そして、少年院から出所する兄から身を守るために、恵里香と母が東京へ来たこと。片山美奈子が事件に関連していた件。出所した後の兄の企みから、洋平と弘行は恵里香を守ろうとしていたことが記されている。

『昨今になっても全国の中学校では、いじめや差別の問題が絶えずに教室で孤立してしまう生徒もいる中で、杉浦恵里香の友人であった河村洋平君やA少年の友人に対する思いやりは、このような事件が起きてしまった中でも尊重するべきである。杉浦恵里香の通う中学校の級友達は、少年の罪に対して寛大な処置が得られるように嘆願書に署名を集めている。杉浦恵里香も校内で開かれる合唱祭の場で、全校生徒や保護者達に訴え掛けると言っている』
 亮治は陽子から週刊誌を取り上げて皆に読み上げていた。
「何だよこれ、それに杉浦なんてきてねぇじゃん」
「でも、これじゃあまるでエリカは見世物じゃない」
 記事の内容を見て教室が騒めいていると、その空気感とは相反した様子の恵里香が入ってきた。
「皆、おはよう」
 昨日まで学校に来ていなかった恵里香が、毎日の挨拶を済ませるように軽く手を挙げてニッコリと笑っている。

 

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