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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第37話 神のいない国

   

陰謀と悪意に立ち向かい、そして信じた者の為、幼き王女は立ち上がる。
王女と王子の運命を駆ける王国ファンタジー。

「この国は、何かがずれている――――」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

今は遠い記憶の中で、笑う。

 

 

***

「エリザ、起きて」
「……――――んん……兄、様……」
「少し予定を変更する」
「…? どういう、こと」

 まだ寝惚けている頭を横へ振って、私はベッドから起き上がった。ルイスは既に身支度を整えていた。時計に目を移す。眠ってから一時間ほどしか時間が経っていなかった。マーサが来た様子もない。

「兄様、マーサは? 後でまた来ると言っていたのに」
「…さっき、お前が眠っている間に下を見てきたんだ」

 ルイスはバッグに荷物を詰め込んでいた手を止めて、私をじっと見つめた。その目の揺らぎを見て、私は段々と状況を理解していく。

「まさか――――“王国兵”が…!?」
「ああ、そのまさかだ。今、下にいる。ただ単にこの宿の客として来たんだろうけれど」
「そんな…どうしよう」
「マーサの合図のおかげで気づけたんだ」

 彼がそう言い、指差した先には、ランプがあった。促されるがまま、私はそれに近づいていく。そして、気づいた。
 このランプは、照明器具としてただ置かれているわけではない。を隠しているのだ。
 重みのあるランプを退かして、私は目を見開いた。そして、驚きのあまり、すぐさまランプを元あった場所へと戻す。

「兄様…こ、これは」
「お前も城で見たことがあるだろう? “無線”だよ」

 細いコードの繋がれた先には、確かに無線が存在した。だが、何故隠しているのだろう。客の目につかない場所へ置いていても、意味がないと思うのだが。

「何故こんなところに」
「それは一般の客が使えるものではないからね」
「じゃあ、何の為に…?」
「…僕に合図を伝える為に使うものだから」

 合図――――?

「音は一度しか鳴らない。それも、僅かなノイズでしかない。けれどもね、僕はそれを決して聞き逃しはしない――――……僕もお前と同じで、耳がいいんだ」

 少しおどけてそう言った。彼も私と同じ体質だったとは、知らなかった。今まで数年以上傍にいたにも関わらず、私は今、それを知ったのだ。隠して――――いたのだろうか。

 彼は私の髪を整えながら、話を続けた。
 

 

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