幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

幻儚奇譚<9> 水色の恋

   

 何時でも、恋をします。
 どの国でも、恋は同じです。
 どんな世界でも、恋は変わりません。
 幻儚の世界でも、恋は恋なのです。

 

 お姉様を初めて見たのは、6月でした。
 柔らかい雨が降っている6月。
 駅を降りたお姉様は、きれいな傘を取り出しました。
 そして、傘をさして、さっそうと歩いて行きました。
 プリーツスカートにブラウス……、水色のカーデガン。
 一目で好きになりました。
 駅からあの住宅街まで、いろいろな道がありますよね。
 お姉様がどの道を通るのか、分からなかった。
 だから、次の日、田舎道で見かけたときは、嬉しかった。
 田舎道。
 紫陽花が道ばたに咲いていて、うっそうとした雑木林があり、その奥に古い神社が朽ちかけている――。
 お姉様も、田舎道が好きなんですね。
 あの日、そっと、お姉様の跡をつけました。
 お姉様の家まで、ずっと、跡をつけました。
 きれいな家に住んでいるのですね。
 お姉様にふさわしい家だ。
 それから毎日、田舎道を、お姉様の跡をつけていたんです。
 気が付きませんでしたか?
 お姉様の家の垣根に佇んでいたこともあります。
 ピアノが聞こえてきました。
 ショパンのポロネーズですね。
 そのくらいは知っています。
 お姉様にふさわしい曲だ。
 ますますお姉様が好きになりました。

 もう、たまらなく好きになってしまったのです。
 お姉様の足元に、この身を投げ出したい。
 お姉様に服従したい。
 心から、そう思いました。
 その一方、お姉様に首輪をつけ、四つんばいにさせたい。
 お姉様を征服したい。
 そうも思ったのです。
 マゾヒズムとサディズム。
 どちらもあるのです。
 その両方に苦しみながら、お姉様を、じっと見つめていました。
 じっと見つめる――。
 それだけで我慢していました。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


コメントを残す

おすすめ作品