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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

推理からはじめよう 2

   

 飛田は堀部家に犯人がいることを公言する。土門警部はそれなら事件の経緯をしっかりと話してから犯人を示してほしいと切望する。

 煩わしさはあるが、飛田は語るように事件について明かす。

 

 堀部家は代々不動産業を経営し、東京都内の商業ビルもそうだが、長野県、山梨県、岐阜県、新潟県、千葉県、と多くの別荘地を所有している資産家である。

 会長は、堀部 源次郎(ほりべ げんじろう 70歳)。白髪の偏屈なことばかりいうご老人だ。

 堀部 瑤子(ほりべ ようこ 70歳)。偏屈ジジイの奥様である。ほっそりとした年寄りだが、無表情で金にがめついオババである。

 堀部家の主で社長の、堀部 陶滋郎(ほりべ とうじろう 45歳)。
 オールバックの黒髪だ。いまだに染めたことはない。若々しく逞しい紳士のような男だ。父である源次郎とはちがい、温情もあれば周囲から慕われる男性なのだ。

 堀部 光子(ほりべ みつこ 44歳)。陶滋郎の妻だ。旧姓は伊藤といって陶滋郎が結婚するとき、源次郎と瑤子は反対していた。最後まで反対していた。自分たちが決めた相手と息子は結婚させるつもりでいたため、気にいらないのだ。だが、しかたなく承諾した。

 陶滋郎が家を出ていくというものだから、瑤子は気狂いそうになるほど発狂していた。

 そういう家庭だ。金持ちなんてそんなものだ。だが、孫ができると考え方も変わり祖父母の性格は丸くなった。いまでは三代仲良く暮らしている。

 堀部 迅(ほりべ じん 21歳)大学4年。長男。来年から不動産業である家業を継ぐために、すでに研修という名目で父親の元で働いている。

 堀部 かほこ(ほりべ かほこ 17歳)高校3年。長女。わがままな甘えん坊だ。今風のギャル。茶髪で、ネイルはカラフルな色で、猫か犬やリボンのキャラクターが貼りついている。

 堀部 七海(ほりべ なつみ 15歳)高校1年。次女。高校生になれたことに嬉しくなっていた。部活はテニス部だ。まだまだ無邪気さがある。勉強を素直にやっているから成績はいい。長男、長女に比べて学習力があり、考える力がある。

 飛田は、土門警部から堀部家の家族と個々の性格などを聞いていた。

「それではまた、犯人を指し示します。よろしいか?」飛田は許可を求めた。

「ちょっと待て。犯人を言い当てるのは無論頼みたいところだが、なぜ犯人なのか、動機や経緯を話してくれないか」土門警部は断るようにいった。

「そうですか、なら、そうしましょう」飛田は納得した。いつになく焦っていたのは、朝食をしたかったからだ。

 トースターで両面焼き色のある食パンにフライパンで熱したイチゴの果実入りのジャムを塗りたくって食べる。至高の逸品のだ。これが毎朝とるべき食事のひとつ。今朝だけは阻まれたため、飛田は少しイラついてもいた。

 飛田は、堀部家の面々を見据えながらうなずく。

「それではいろいろと話すことにします。わたしは探偵です。飛田 真男(まことお)。真実の真と男と書いてまことおと読みます。両親がそれぞれつけたい名前がありました。“まこと”、と“まさお”でした。それを混ぜ込んでしまい、ややこしくされたのです」

「名探偵」木田刑事がいった。「名前はいいから、推理を進めて」

「そうかい。わかった。そうしましょう。警視庁の警部さんがどういうわけか若輩者のわたしのような探偵に依頼してくるのかは、ひじょうに理解できます。いちおう報酬なんてものも頂けます。だが、責任逃れなのです。もし犯人を突き止められなかった際、警部のキャリアに汚点を残さずに、わたしに責任を押し付けることで世間からは外部コンサルタントが推理して犯人だと指摘した。と公表するのです。警部は無関係を装えます」飛田は遠慮なく事実だけを述べる。

「ちょっと」警部は割ってはいった。「そういうことはいいから、それにそんなことないからさ」

「だって経緯を話さないと。探偵が警察をよそに事件のあらましを話すなんて、おこがましいでしょう。だからどうして探偵のわたしが犯人を示すか、その理由を話さないことにはこのひとたちも納得いかないでしょう。容疑者なんだから」飛田は堀部家の面々を指差した。

「なんですって」祖母の堀部 瑤子が金切り声を出す。

「わたしたち疑われてるの?」家主の奥さん、堀部 光子が顔をしかめた。

「そのとおりです!」人差し指を立てる飛田は自信満々に答えた。「犯人は、堀部家のこの中にいる」

「わたしの家族を疑うのか、父は家族のだれかに殺されたというわけだな?」堀部 陶滋郎がいった。家主で社長だ。「そうか、ならいってもらおう。さっきあなたはだれを“犯人”だと、指したんだ?」

「なんだ、さっき犯人をさしていなかったのか?」警部の表情が和らいだ。安易に指してちがってました、ってことになったら名誉毀損で訴えられかねない。

「ええ、指をさすまえに警部がわたしの前に立たれた。ひじょうにじゃまでした」飛田は首をかしげた。

「ああ、そうか。ならつづけてくれ」土門警部は続きを話すように、うながす。自分の体格がでかくて助かったと案じた。

「犯人を見つけるのにそれほど時間はかからなかった。さいしょは、なんでこのひとがと思った。そのことで頭を悩ました。まったくもって解読できなかった。動機が見つからない。わからなかった。だが、この家には歴史がある。伝統的な長い歴史、それはアルバムをみながらわかりはじめてきた。糸口を見つけた。それを手繰り寄せる。過去のできごとを巻き戻すようにね。犯行はわがままか、それとも突発的な事故になってしまったのか、殺す気でいたのか、いずれにせよ致命傷の祖父、源次郎さんは亡くなってしまった──」

 飛田は語り明かすように話す。

 

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