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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

推理からはじめよう 3

   

 二日前に土門警部から依頼があり、堀部家に直接赴く飛田探偵。結果的にわずか二日でこの事件を解決まで導く。

 やはり警察とは着眼点がちがう。そして一瞬でこの事件が事故や寿命ではなく、殺人であると見抜く。

 

 探偵飛田 真男は堀部家に着いた。

「土門警部は?」

 堀部家の前で警官がひとの立ち入りを制限するように見張っていた。

「あなたは?」制服に身を包む警官が飛田を制する。

「飛翔探偵事務所の飛田 真男です。土門警部にここでの事件を解決してほしいと依頼がはいりましたので、来たとつたえてくれますか?」

「ひしょう、たんていじむしょ? あー、いつもの探偵さんですね。お噂は伺ってますよ。警察に協力している若き探偵がいると。でもただ利用されていると、噂が流れてますよ。だいじょうぶですか?」警官は飛田の身を案じてくれた。

「だいじょうぶですよ。こちらとておなじようなものです」

「そうですか。では中へ」警官に通された飛田。門構えの立派なことを認めながら一歩を踏み出した。

「土門警部、飛翔探偵事務所の飛田探偵がきました」警官が案内してくれた。

「どうも、ありがとう」飛田は案内してくれた警官に礼をいった。

「よくきてくれました」土門警部が歓迎した。

「でもいったいどうされたんですか?」飛田はあちこち屋敷内を見渡しながらたずねる。

「おい、木田、説明しろ」警部はめんどくさそうに事件の概要を部下の木田刑事にもとめた。

「はい、わかりました」怪訝な顔をする木田刑事だった。外部の探偵の飛田を快く思っていないだけのことだ。

「おねがいします」微笑を浮かべた飛田。「いいネクタイしてますね」

 木田のブルーのネクタイを褒めたが、飛田を一度にらんでから話した。「いいか、仏さんは、この堀部家の祖父で、堀部不動産の会長、堀部 源次郎(げんじろう)さん、年齢は70歳。見てのとおり自室で眠りながら亡くなっている。なんともすまして安らいだ顔だ。苦痛も歪みもない。おそらく寿命だと思う。だが、家族はいう」

 一人ひとり、家族の特徴をきかせた。そして、祖父にたいしての印象もまた証言する。

 木田刑事はつづけた。「会長がいきなり寿命で亡くなるような要因がない。家族の主張だ。だったら司法解剖をさせてもらいたいとお願いした。死因がはっきりしないときているからな。布団のなかで眠りながらそのまま目覚めずにいたのか、それとも何者かによって作為的に殺されたのか、その境目がわからない」

「なら司法解剖すればいい。わたしも同意見だ。探偵の出番はない。問題はない。解決かいけつ、じゃんじゃん──」飛田はおどけるようにいった。

「そうだろ、そう思う。めずらしく意見が一致したな」木田刑事は笑った。

 遮るように土門警部は割ってはいる。「そういうけどな、仏さんをむやみに司法解剖に回すことを家族が同意するかはべつだ。拒むならできないし、これが殺人だという証明が爪の垢ほどでもあればいいんだ。寿命では、できないんだよ」

 飛田はうなずいた。警部の威圧感に迫られた。

「殺人の確証たる材料がほしいんだ」土門警部はさらに圧迫している。「そのために探偵を呼んだ。わたしら刑事の頭ではみえないものが、飛田探偵の目なら見えるかもしれないと思ってだ」途中から声を荒げているのはいつまでも自分たち警察で解決できないからだ。外部に頼ってしまう不甲斐なさ、それは自分自身を罵倒していたのだ。

「警部」林村刑事が土門警部の怒声が聞こえたところで現れた。「気持ちはわかりますが、冷静になって」

「ああ、そんなつもりじゃなかった。自覚している。わかっている」土門は背をむけた。

「それで、探偵さん」林村刑事が代わって話す。「なにかみつけられるか?」

「ええ、殺しです」即答してみせた飛田探偵だった。すでにここにいるボンクラ刑事たちには見えないものが見えているようだった。

 林村と木田は顔を見合わせていた。

「ほんとうにか?」木田はたずねる。

「なぜそう思う?」林村もたずねる。

 背後で確証たる発言を飛田探偵からきいた警部も振り向いた。

「だって、マネキンのように直立したかのような体勢で寝ている。まるで立っていたように」飛田が指摘する。

「眠っていたらそうなるだろ」林村がいった。

「寝返りなどしませんか? もし寿命で眠りについても、ある程度、身体のバランスというか、ここまで姿勢を正しくして、両手足をまっすぐに伸ばしている。起立、気をつけ、休め、気をつけ…、という軍隊のような感じだ」飛田は整列するときの掛け声と姿勢の動きをしてみせた。

 刑事たちは首をかしげていた。

「だからなんだ?」警部がいった。

「変な動きしやがって」木田刑事がぼやいた。

「死人がここまで姿勢をただしますか? 殺したあとに死体を寝かせた。死後硬直がはじまっているさなかです。だからむりやりここまで姿勢をただすようなかっこうになった。自殺を偽装しようとしたばかりに。他人の手が加わっていると見るのが道理。浅はかなことです」

「ほんとうか。なら、犯人は?」警部は急かした。

「そのまえに」飛田は遮った。「犯人の目星はわかってます」

「目星がわかっている?」土門警部が目を細めた。「だれだ?」

「堀部家のだれかです」飛田はいった。

 

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