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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

推理からはじめよう 4

   

 探偵としての調査がはじまった。広大な屋敷内を動きまわっている。

 アルバムを見つけて勝手に見漁る。堀部家の家族写真だ。あまり事件には関係ないが、飛田は違和感をおぼえた。

 それはこの家系の血筋に関わることだった。

 そして見えてくる犯人像。その裏にはさらなる深い謎が隠されている。

 

 飛田はあちこちを探検し、動きまわっていた。

 堀部家の面々は、警察の捜査が終わるまで、ひとつの部屋に集まってもらい隔離していた。

 西側には大広間があった。そこに隔離していた。警官が3名が見張っている。北側には、迅、かほこの部屋がある。ほかには物置小屋が設置されている。七海はの部屋は北東側にある。南下すると、中央の大広間へとつながっている。東側には、祖父の源次郎の部屋がある。その手前に祖母の瑤子の部屋が仕切られてある。すこしくらいの物音なんか聞こえたりしない距離感で離れている。社長夫婦の部屋は、中央の二階にある。この家族の伝統でもある。主が大黒柱。つまりが中央に就寝するべきだと。めずらしい習わしだった。中央大広間の南側に台所があり、そのまま通り抜けるようにして入り口の門構えへとつづくのだ。

 古民家そのままのイメージの屋敷だろう。

 この家族のアルバムをかってに探偵は閲覧している。堀部家の家族が写っている。

 飛田の目には、そのアルバムの写真に違和感があった。

「うーん、おかしいな」

 アルバムの背表紙にはタイトルが貼られている。たとえば“迅の成長録”。“陶滋郎の成長録”といったものだ。

 だが、光子さんや瑤子さんの成長録なんてものはない。代々この家族で誕生した者が血族として引き継がれる記録なのである。血筋がない、光子、瑤子、は赤の他人で世継ぎのためにその身を捧げにきた嫁であることがわかる。

 陶滋郎の後継者となるのが、22歳の迅なのだ。そのことを誕生したときから自覚を持たせるために、こういう伝統的に写真として成長記録なんてものを残しているのだ。祖父源次郎もある。そして、その先代のもあるようだ。

“かほこの成長録”。“七海の成長録”もとうぜんにある。後継者としてまだ未来になにがあるかわからないからだろう。

 優先順位の一番目がなんらかの理由で亡くなるとか。

 赤子の写真がかなりある。着ている服からして、息子の迅であることがわかる。
 もうひとりの赤子が着ているのは、ピンク色だ。長女かほこだとわかる。

 写真には、油性マジックで家族のだれかが、ふたりのそれぞれの名前が書かれていた。

“迅、産まれたとき”。
“かほこ、誕生の瞬間”。

“1才になった迅の誕生日会”。
“かほこ1才、おめでとう”。

 ことあるごとに一年間の行事、それいがいでも日常において成長記録が写真という証拠としてアルバムに貼られていた。

 だが、ひとりだけいない。飛田は、家族になんらかの変化や、風習といった一年間の行事をおろそかにしただけだろう、と見て取れなくもない。

 そういう家族はたまにある、よくある話だ。おなじことの繰り返しのはずが、数が増えていくたびに、手のかかることも増していくため、一人ひとりの成長記録なんてものができなくなってしまう。
 時間や手間を惜しむことにもなる。

 飛田の頭脳に駆け巡る疑問が、事件解決の鍵だと推察していた。

「警部!」大声でいった飛田探偵。

「どうした!」警部は期待をこめていた。

「帰ります」通り過ぎるようにそのまま堀部家を出ていった飛田探偵だった。

「なんだあれは…」
 意外過ぎる行動に、警部たちは唖然となった。

 屋敷を出ると、飛田を迎えにきた者がいた。

「飛田さん」

「来たか」飛田はいった。

「すみません。落ち込んでいたもので」三城屋 佑がバイクに乗って現れた。

「ナイスなタイミングだ。よし、きょうのこと出社拒否についてはすべて許そう。そして、つぎまた榛那くんにアタックしてみるのだ」飛田は三城屋のバイクの後ろに乗った。

「マジ、エールを送ってくれるなんておもわなかった」

「どうしてだね?」

「彼女、ちょっとは飛田さんのこと気になっているとか、なってないとか──」三城屋は首をかしげながらいった。

「ほう、彼女はそんな想いをあの膨らみのある胸のなかに抱いていたのか。はやくわたしに告白してくればいいのに」飛田は真顔でいった。

 過信でも過剰でもない。自分がモテルことをアピールしているわけでもない。ただ単に、ミステリアスなことにしか感心がない。女の心の色恋沙汰に時間をとられて悩んでいる女子会話に時間を無駄にしたくない。そう思っていた。

「ほんきでいってんすか?」三城屋はいった。

「出したまえ、レッツゴーだよ」飛田は前方を指さした。

「雇い主だから敬語だけど、同い年なんだよな。しかも、古っ」三城屋はバイクのキーをまわした。

 エンジン音と振動が、飛田の思考回路にたまらない刺激を与えている。ちょうど心地よく、安らぎにも似た、それはまさに極上のマッサージマシーンのようにだ。

 

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