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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第40話 教会は喰らっている

   

信じた者の為、幼き王女は陰謀と悪意に抗い、立ち上がる。
王女と王子の運命を駆ける王国ファンタジー。

「――――一体、どこへ行くのだろうか」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

今は遠い記憶の中で、笑う。

 

 
「はあっ、はあっ」

 教会内には明かりが灯っていた。安堵と興奮で、私が荒い呼吸を繰り返す中、ルイスは胸の辺りを押さえて、座り込んでいた。歯を食い縛る彼の額には、玉のような汗がびっしりと浮かんでいる。頬を伝ったそれが床に落ちた。私の呼吸とは比にならないほどの苦しみように、私は目を見開く。そして、ルイスの傍へと駆け寄った。

「ル、ルイスッ!?」
「ッは…!」
「兄様! しっかりして! 兄様!?」
「エリ、ザ」
「! もしかして矢が…!?」

 そう思ったが、ルイスの体に外傷は一つも見当たらなかった。神経を研ぎ澄ました結果、疲労が頂点に達してしまったのだろうか。それにしても、辛そうだ。
『大丈夫だ』、とでも言うかのように、ルイスは私が伸ばした手を押しやった。

 ガシャァアアアン!!!!

「「!!」」

 ルイスが扉にかけた鎖が、激しく音を立てて揺れた。外からこじ開けようとしているのだろう。この扉が破られるのも、最早時間の問題だ。
 未だに辛そうに息を吐く彼を見て、私は混乱したまま、その震える体を抱き締めた。先程、私へ向かう矢を防いでいた彼の動きは、とても人間技とは思えなかった。それも短剣一本でどうにかなる量ではなかったはずだ。一体、彼は何をしたのだろう。

「ルイス…」
「もう、大丈夫、だよ。ごめ、ん。怖かった、だろっ?」

 息も絶え絶えに、そう言い笑った彼を、私は更に強く抱き締めた。
 私の心配ばかりで、彼はいつも自分のことを後回しにする。私よりも辛いのに。私よりも、怖かっただろうに。

「守ってくれてありがとう、兄様」
「…うん、お前を守れてよかった」
「立てる? 急いで隠れないと…ここももうすぐ破られてしまうわ」
「そうだね、行こう」

 ルイスは額の汗を拭い、私の手を取って立ち上がった。その目にはもう疲れの色は見えない。彼の手をぎゅっと握り、私達は目の前の階段を駆け上がった。
 そして、顔のすぐ横を掠めたランプの裏に、私は教会に似つかわしくない絵を見つけてしまった。一瞬のことだった。だがは、私の記憶へ深く刻まれていく。

「――――ッ…う」

 あまりの禍々しさに、私は勢いよく首を振った。

 『人間達が天使を殺している絵』。まるで本当に鮮血が浴びせられたかのような赤に、胃が痙攣を起こしそうになった。
 

 

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