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亜美の気持ち、大和の思い

   

 亜美が抱いている気持ち。
 大和が抱いていた思い。

 その二つが、そっと重なった。

 

 
 会を行っている時。
 やはり大和は大和だった。
 とにかく明るくて、元気に笑ってはしゃいで。
 こうしてクリスマスを過ごすのが、亜美の目標だった。
 大和とただただ何も考えずに、みんなでワイワイとはしゃいで何も考えずに笑い合って過ごすクリスマス。
 ずっとあこがれていたそれが、今年のこの一回限りで終わってしまう。
 そう思うとやるせなくて仕方がなかった。
 拗ねるしかないじゃないか。
 みんなに合わせてワイワイと楽しむような大人の心は、残念ながら亜美は持ち合わせていない。
 自分の気持ちに忠実で、すぐに顔に出てしまう。
 泣きそうではあるが、それよりも悔しさが先立っているのだ。
「亜美!」
 仲間に囲まれた大和が、カウンターですねている亜美に手を挙げた。
「亜美!!」
 こっちにこいと、手招きする大和。
 寂しさがみじんも感じられないその明るい表情に、亜美はだんだん腹が立ってきた。
 寂しいなんて思っているのは自分だけなのかと、そう考えれば考えるほど腹が立たしい。
「あーみ!」
 笑顔の大和が手を振っている。
「呼ばれていますよ。」
 マスターからの声が、そむけた顔の後ろから飛んでくる。
「聞こえてる。」
 亜美がマスターの方を向くことがない。
 こちらにやってこない亜美を眺め、小さなため息をつく。
「迎えに行かなくてもいいの?」
「いいよ。後で話すから。今あいつを触っても仕方ないさ。」
 諒のそれに、若干困った声色で返事をして、また大和はニッと笑った。
「飲もう!今日はそういう会でしょ?!」
 大和の言っていることはもっともである。
「でも、」
「いいの!あいつはほっといていいから。心配しなーい!」
 諒の口を親指と人差し指でつまんで笑う大和。
 そして本当に亜美を放っておいて、オレンジジュースを飲み始めた。
 ほかのメンバーも大和の言っていることにしたがって、酒を飲むもの食事を摂るもの各々好きなことを始めた。
 諒はここにきて始めてのクリスマス会だから、やはり亜美が気になって仕方がない。
「大和に任せとけば問題ないさ。」
 諒の不安げな表情に気が付いた明広が、諒の今にも折れそうな華奢な肩に筋肉質な腕をドスンと乗せた。
 そのはずで、諒の体がグン!と重みに耐えられずに下に沈む。
「ダーイジョウブ大丈夫!気にしなーい!!」
 明広に半ば強引に担がれて、諒はみんなの中に入っていった。
 
 

 会がお開きになったのは、深夜1時を回っていた。
 諒の子どもたちを明広がおんぶして、お酒でふらふらになった諒を和彩が肩を貸して送り届けていった。
 茜と心治が帰宅し、そのほかのメンバーもそれぞれ帰っていった。
 みんな帰ったホールは、怖いくらいに静かで。
 今までの騒がしさが、夢のようにさえ思える。
 マスターも亜美に鍵を託して帰宅した。
 不貞腐れたまま終わってしまったクリスマス会は、亜美にとってなんとも悲しい思い出になってしまった。
 来年からまた離れる。
 もう数日で一緒にはいられない。
 一人で酒でも引っ掛けようかと席を立った時だった。
 
 

「残ってたんだな。どこ行ったかと思って探しちゃった。」
 
 

 コートに身を包んだ大和が、スタッフ用の出入り口から入ってきた。
「電話かけても出ないし。」
 はーあっと、気の抜けた声を上げて、亜美の隣に座った。
「電話なんかなってないし。」
 亜美は膨れたまま、大和の方を見ることもなく言い返す。
「鳴ってないわけないじゃん。何回掛けたと思ってんだ。」
「鳴ってない。」
「携帯見てみなよ。」
 見たくなんてない。
 微動だにしない亜美。
「亜美ー?見てみなって。」
 その亜美の顔を覗き込む大和。
 ジワリと顔をそらすと、そらした分だけ大和がにじり寄ってくる。
 逃げては距離を詰められを繰り返し、亜美はいも虫みたいに椅子の上で丸まって、大和は亜美の頭の両脇に手をついて亜美の顔を覗き込む。
「あーもー!しつこい!!」
 しびれを切らして、亜美がポケットの携帯電話を乱暴に握ってポケットから勢いに任せて取り出した。
「だから鳴ってな、」
 毒を吐きながら液晶画面を付けてみると、着信18件という履歴が目に入った言葉が詰まる。
「鳴ってるだろ?」
 うれしそうに笑う大和。
「ちょっと、邪魔!座ってよ!!」
「はいはーい。」
 大和の笑顔を見るや否や、亜美はバシバシと大和の肩をたたいた。
 言われるがまま亜美の隣に座り、頬杖をついて亜美を眺める。
「鳴ってたろ?」
「鳴ってないから出てないんじゃん。なんで鳴らなかったんだろ?」
「サイレントマナーにしてたんじゃない?」
 そういわれ、携帯の音声を確認してみると、まんまとサイレントマナーになっていた。
「…なってた。」
 こういう時は素直な亜美である。
 むっとしたまま大和を見ると、大和はニッと笑って亜美の方に椅子を寄せた。
 
 

 

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