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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

推理からはじめよう 6

   

 飛田探偵は、推理からはじめよう、そういうと刑事たちをそっちのけで自分のペースで語りはじめた。

 ついに飛田は犯人をしっかりと指し示した。

 なぜ、その人物が犯人か。だれも納得はいかない。裏づけを飛田は勝ち誇るかのように真相を話す。

 

 屋敷の大広間で飛田、土門警部、刑事たちと堀部家の面々が集まっていた。

 朝食を抜いていた飛田は空腹のせいもあり、はやく切り上げて渋谷駅近くにある喫茶店のサンドイッチを食べたくてしかたがなかった。

 だが、そのたのしみがあるから今のこの緊張感ある状況と対峙することができるのだ。

「生きていることで、いちばんの楽しみは警部わかりますか?」

「なんだ? しらん」警部は眉間にしわを寄せた。

「うまい食事ですよ」

 土門警部は、頭を捻りながら考えていた。

「さて、みなさん、推理からはじめよう」飛田は唐突にまた勝手に自分のペースで唇を切った。「犯人も、動機も、亡くなった会長も、そしてなにが隠されているか、すべてわかりましたよ。犯人の動機、それとその衝動的な隠された犯行、お話しいたします」飛田は自信過剰な口調で話していた。

「だいじょうぶか、あれだけ大見栄きって話してますよ」木田刑事は、警部にぼそぼそと話す。

「ああ、だいじょうぶだ。みてろ」警部は信じていた。

「なんですか、あなた、わたしたちのなかにほんとうに犯人がいるというのですか?」祖母の瑤子がさっそく噛みついた。

「そうです。じゃなきゃおかしい。外部犯の犯行のほうがむずかしい」飛田はいった。「なぜなら、ここは古い建物のようにみえるが、入り口の門構えは立派なものだ。監視カメラもついている。そしてセキュリティも万全だ。祖父の源次郎さんは、そういうことにはいたく気にしていたようですね」

「ああ、そうだな」陶滋郎は同意する。「たしかに父はシビアに考えていた。というのも五、六年前に盗難があった。母や、妻の財布から現金が盗まれていた。そのこともあって──」

 光子、と瑤子はうなずいていた。

「そうですか。でも、そんなことでいちいちここまでのセキュリティはしない。おそらくその犯人は迅さんだろ。中学、高校生といった年齢だと遊ぶための金を欲して盗んだだけだ」飛田はとっさに思いつきでその問いに答えた。

「なにいってんだよ、探偵よ!」迅は気に障ったようで声を荒げた。

 光子と瑤子は迅をゆっくりとみつめた。

「ちげーから、そんなの、おれはちがうよ。盗ってない」肩をすくめる迅。

 だれもがその態度に、“こいつやったな”、と察した。

「わかりやすいやつ」木田は傍から罵った。

「家庭の問題だ、でも被害届をだしたら、すぐにとっ捕まえてやるさ」林村がいった。

 土門警部は、黙れと、ふたりに注意した。

「まぁ、いいでしょう。それがきっかけになったわけではないのはたしかです」飛田はいった。「会長は、あることを日常において、記録しようとしていた。写真もそうだ、それは堀部家の人たちを撮影していた」

「撮影?」

 一斉に声が揃った。そのなかには警部、刑事も含められていた。

「そうです」飛田はニヤリと微笑んだ。思っていた以上のリアクションが返ってきたことが嬉しかったのだ。

「堀部家には代々写真をアルバムで成長録というものをのこしている。だが、源次郎さんはそれを写真から動画に変えようとしていたのではないですか?」

 飛田の問いに堀部家の者は顔を見合わせていた。どうやら、そういう意識でのセキュリティ、監視カメラではないことがこれでわかった。

「そうですか。ならば、ある人物を撮影し、ある人物へ送り届けていたことが濃厚となる」飛田はいった。

「どういう意味だ?」警部が割ってはいった。

 堀部家の迅、かほこは首をかしげていた。それ以外の大人たちは顔を曇らせていた。

「おや、どうしましたか?」飛田はわざとらしく問い質す。

 刑事ふたりは妙なこの空気に違和感を感じた。

「その問題はあとにしますか。まずは、犯人の犯行を話しましょう」

「そうしたいならそうしよう」土門警部は了承した。

「すぐすみます。いたって簡単だ。犯人は夜中に会長の部屋に訪れた。寝る前になんらかの話でもしてたんでしょう。だが、それはめずらしいことではない。高齢者を気遣うだけの心優しい純粋な思いでのことだ」

 すでにそこで全員が察した。

「おい、ちょっと待て」息子の迅がすぐに呈した。「それってだれをいっているんだ?」

「たずねるくらいだ、きみでもわかったのだろう。犯人がだれかを」飛田は微笑んだ。「やっぱりさきに犯人を名指ししましょう」

 顔色が変わった。鼓動がそれぞれ高鳴りをしめしていた。

「犯人は、あなただ」
 今度こそ、飛田は指を指していた。

 

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