幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

推理からはじめよう 9【END】

   

 七海犯人で幕を閉じるかと思いきや、遺書から見えてくる犯人像。それは飛田が即興で違和感からの着眼点を光らせた。

 真犯人がいる。

 そして、その解決の先にある家族や愛、飛田もまた同じ苦悩の渦中にいる…。
 

 ついにクライマックス。

 

「そうよ」かほこも同意した。「おじいちゃんの名前が入っていて日付も、それに財産についてはおばあちゃんに渡す、って書いてあった」

 飛田はひらめいた。「すみません、その遺書みせてもらえますか?」

「いや、いまそれは弁護士に預けている」陶滋郎は顔を背けた。

 そわそわしている光子。

 挙動不審な夫婦に、飛田は見逃さない。刑事たちはなにひとつ疑問に感じていないようだ。無防備すぎる。だが、飛田の着眼点はたしかに疑問を晴らさないわけにはいかない。この目で見る必要がある。

「なにをした?」飛田はにらむように視線を向けていた

 その言葉は社長夫婦に向けられていた。

 ばつの悪そうな態度だ。目を背けている。喉にも汗が垂れているんじゃないか。

「だって、見つかった遺書には許せないことが書かれていた」陶滋郎は奥歯を噛みしめ吐き捨てるようにいった。

“すべての財産は七海が相続する”。

「たったそれだけだ!」陶滋郎が叫んだ。「しかも弁護士は、それが有効だというんだ。父の自筆で、捺印と拇印まで押印している、作成年月日も亡くなる日のもだった。部屋にこもって毎晩、辞世の句のように書いていた。まるで、堀部家の血族の者には一円も渡さんといっているようだった」

 瑤子も顔をしかめた。どうやら、裏切られたことに腹を立てているようだ。それはむりもない。

 財産は妻である自分へと信じていたのだから。それが裏切られた。激昂しないわけがない。

 それと、感情的に思えば祖父が一番愛していたのは、七海の母親だったということになる。長年共についてきたというのに、この結末は酷すぎる。妻としてというより、堀部家の存続に破綻をしかねない許しがたい判断だったからだ。

 そして、その愛人の子どもである七海に遺産のすべてを相続させるというのは、堀部家の者ならだれもが承諾できないことだ。

 飛田はいった。「祖母の瑤子さんに財産について、“渡す”というのはいただけない。これでは有効ではない。やはり、財産を“相続”と記すほうが有効なんですよ」

 遺書を捏造したのは、陶滋郎だった。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
-,


コメントを残す

おすすめ作品

見習い探偵と呼ばないで! Season6-4

『蒼色推理』−雪銀館事件− 第四章「雪密室の謎」 3

8月のエンドロール 11

見習い探偵と呼ばないで! Season16-5

見習い探偵と呼ばないで! Season20-3

家元 第十部 危機を越えて

   2017/09/22

ノーベットノーペイ

   2017/09/22

見習い探偵と呼ばないで!【番外編・御影解宗のデート】3

   2017/09/22

ロボット育児日記26

   2017/09/21

怪盗プラチナ仮面 11

   2017/09/20