幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season17-2

   2017年1月30日  

 J-Classic音楽事務所から依頼がきた。つまり佐脇氏のゴーストライター問題。

 MUROMATIが世に出回って、すべての作曲家としての印税の支払いについてできないのだ。

 現状、作曲者が空白となった。

 かといって佐脇氏には支払えない。名義貸しのようなものだ。新藤氏が本来は権利がある。しかし何か意図して作曲家としての名誉を自ら放棄した。

 この先、MUROMATIという作品がスピーカーから流れることはないかもしれない。

 さらに新藤氏はとんでもないことをいった。そのせいで佐脇氏はさらに追い込まれる。

 

 都内渋谷区にあるJ-Classic音楽事務所(ジェイクラシック音楽事務所)で不穏な動きがある。

 先日、記者会見した新藤氏のクラシック音楽MUROMATIの作曲家が自分であると主張したこと。つまりがゴーストライターがいた事実を公表したことだ。

 佐脇氏はこれに反発していたが、音楽事務所はこれについて困惑していた。どこかで気づけなかったのか。なぜこうなったのか。

 作曲者が宙ぶらりんになってしまい、問題があるのが作曲家の印税権利だ。どちらに支払えばいいのか、事務所側も混乱していた。もとよりだれに支払うのかがわからなくなった。

 新藤氏はその権利を破棄するといった。「自分の行ったことの罪をどうしても隠し続けることはできない。これから先の音楽活動ができない」というのが理由であった。

 佐脇氏は作曲者は自分にあると主張するも、マスコミやMUROMATIのCDを購入した一般人からは批判を浴びていた。

 しかも新藤氏は佐脇氏の聴覚障害が嘘だと言い張ったのだ。

 ふとしたとき佐脇氏が携帯電話で通話をしていたのを新藤氏が目撃したことから始まった。

 これによりいま詐欺疑惑で立件にあがっているのは佐脇氏と新藤氏。

 J-Classic音楽事務所にも管理能力の疑念の声が投げかけられている。
 
 

 そんなおり、J-Classic音楽事務所の社員から氷室探偵社に依頼がきたのだ。

「作曲家の権利がだれにあるか、印税の支払いに困っているためということか…マジでこんなところに訪れるとはな…」御影が驚愕しながら見上げていた。

「まったく…」川上がいった。「なんだって音楽業界ってのは厄介な」

「なにか関係が?」水桐がいった。

「要するに芸能関係だろ。スキャンダルに耐えない世界だなと思ってな」川上が囁くようにいった。

「そうね」気のない返事をする水桐だった。「わたしはあまり興味ないんだよね」

「そんなこというと小柴さんに睨まれますよ」御影も囁いた。

 三人が遠目で見つめながら受付をすませているのは森谷と、その小柴だった。

「小柴さんが一緒にくるなんてめずらしい」水桐が眉間に皺を寄せながらいった。

「それだけなにか思入れのある楽曲だったんじゃないんすか」御影がいった。

「ああ、その例のMUROMATIって曲か」普通の声量で川上がいったら、周囲を行き交うJ-Classic音楽事務所の関係者らしきひとが過剰に川上を見据えた。「えっ?」

 熱い視線を浴びている川上を御影と水桐は背をむけた。他人のふりをするのも御影は得意だった。

「むろまち、室町くんは元気かなー」川上がすっとぼけるようにいった。

「よくそんなく、ごまかしたつもりですか?」御影が突っ込んだ。

「うるさい、他人のふりしやがって…」

 小柴と森谷が受付を済ませたようでもどってきた。

「担当のひとがこっちにくるって、さすがに中には通してもらえないようね」小柴が手帳を開きながらボールペンでなにかをサラサラと書きながらいった。

「それにしても記者らしき人らがあちこちとカメラを見せびらかせながらいるのだよ」森谷が目ざわりのようにいった。

「ほっんとうに目ざわり!」小柴が溜めに溜めたストレスを吐きながらいった。

 川上と水桐はどっぷり嵌っている小柴の一途な目の輝きが怖くなっていた。

「こんにちは」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
-, ,


コメントを残す

おすすめ作品

鬼神楽 3

愛の聖域 前編

見習い探偵と呼ばないで! Season5-5

金にまみれる男 3

生かすも殺すも匙加減⑤