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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season17-3

   

 小柴は率先して松井経理部部長と対話をしていく。しかし、話を聞いた探偵たちはどこか冷ややかな印象だった。

 もとよりこんな厄介で世間が注目している依頼に関わることに戸惑いがある。

 それとクラシック音楽というのがなかなか踏み込めない領域だった。

 そこで探偵たちは依頼を拒否した。

 小柴は激怒寸前だったが川上のアイデアに小柴の思考回路が一瞬止まった。

 そして、残された御影とともに二人で調査を開始することになった。

 

「おーい、光田くん」

 声をかけたのは田中 准市(たなか じゅんいち 45歳)。経理部部長。印税の管理について今後どうすればいいかわからず困り果てていた、と光田がいっていたそのひとだ。

 見た目気の良さそうなおじさんだ。太目だがしっかりとしたスーツを着こなし髪型も模範になるようなサラリーマンの短髪の髪型。
 その敏腕が試される最大の試練の真っただ中の男の登場だ。

「探偵さんたちが来ていると聞いて、ちょっと顔をだしにね」

 災難だな、と御影は同情した気持ちをしまい込んだ。

「氷室探偵事務所の探偵です。わたしはちなみに事務員ですが、今回は個人的に同席させていただきました」まさか小柴が積極的に仕切るとは思ってもみなかった。

 よっぽどの思いがあるのが探偵たちを引かせていた。

「そうですか、期待してます。わたしはなにぶん、金勘定が仕事で…今はてんてこ舞いです。みなさんが佐脇氏と新藤氏の主張について真相を解き明かしてくれれば印税をどうすればいいか収められます。このままですと現代曲のクラシック音楽として日本の作曲家が作り上げたMUROMATIが作曲者空欄で世にでたままになってしまうので…これは日本の作曲家として西洋音楽と肩を並べる大事な一曲なんですよ…」松井は熱弁していた。

「クラシック馬鹿だ」川上は唇を動かすことなくいった。

「まったくね」水桐も顔をそむけて揶揄した。

「同感です」小柴だけは松井の気持ちに共感する一人だった。

「マジか…」御影は眉を歪ませ、温度差の異なる探偵と小柴を見て、呆然としていた。

「彼女たちから話は聞いたと思うが、新藤氏は佐脇氏に印税の支払い権利はある。新藤氏は放棄している以上、佐脇氏が印税を受ける権利がある。だが、まだ作曲者名が空白のままではJ-Classic音楽事務所としては空白の作曲者権利を与えることもできない。このことで佐脇氏は訴訟を起こすとは思う。彼も生活がかかっているからな、まぁもっとも世間がそれを断絶するだろうけど…」

 どこか寂しそうに言い放つ松井だった。

 おそらく松井もファンの一人だったのだろう。今回の報道で多くのファンが愕然と膝を落としCDを折ったことだろう。

 小柴のいつになく悲愴感ただよう表情が物語っていた。

「それではよろしくお願いしますね」松井は少し腰を曲げて会釈した。

 寂しそうな背中が去っていく。松井は自分のデスクにもどり金勘定をまた始めるのだろうと察しがついた。

「それではよろしくお願いします」頭をさげる安田と光田もとんでもない問題にかかわっていることで疲弊しているようだ。

 小柴が礼儀に応じるように頭をさげた。探偵たちはこれには習わなかった。

 水桐も、川上も、森谷でさえ挨拶をしなかった。すでに頭は切り替わり探偵として頭脳がめぐっていた。

「失礼します」

 

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