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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第47話 裏切り

   

信じた者の為、幼き王女は陰謀と悪意に抗い、立ち上がる。
王女と王子の運命を駆ける王国ファンタジー。

「あなた達は…あの、優しく孤独な王を裏切ったッ!!」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

もう、何も――――思い出せない。

 

 
「陛下はあなたを信じていた。信じて、いたのに」

 私の乾いた唇から零れだした言葉を聞いても、エイビスは微動だにもしない。それでも私は、彼の心に少しでも陛下への思いが残っていることを信じて、言葉を続けた。

「私だって、あなたを信じていました。あなたが陛下のことを必ず守って下さると…あなたなら、重傷の陛下を救えると…!」
「私が陛下を…ですか」
「それなのにッ――――あなたは! あなた達は…あの、優しく孤独な王を裏切ったッ!!」
「…………」
「孫を守る為に、遠ざけることしか出来なかった。誤解を受けても尚、突き放すしかなかった。そんな優しい祖父が殺される理由なんてなかった」

 生誕式当日、私とルイスに共に生きようと言ってくれた陛下の顔が脳裏に浮かんで、消えた。
 私とルイスを守る為に、傷ついた体で囮となってまで戦い、最後まで私達の祖父でい続けてくれた、寂しい人。あのお方が、他国の兵士ごときに殺されていいわけがない。陛下はこの国の為に懸命に生きていた。これからも、生き続けるべきだった。

「私に…一緒にいようと言ってくれた。私の頭を、躊躇いながらも撫でてくれた。その手の温もりを知っていながら、何故あなた達は戦わないのですか?」

 私の声は、船上で響き渡る。
 兵士達に聞く耳がなくても構わない。今この場で、幾本もの矢に打たれようとも、私は声を上げなくてはならなかった。偉大な王の孫娘として、語らなければいけないから。
 いつか、この言葉を思い出して、彼等の内の誰かが叔父様へ疑問を抱いてくれると信じて、言葉を放つ。

「私は見たのです。リュスト帝国軍の兵士が、陛下に剣を突き刺すところを。私達を庇い、囮となったあのお方を。…あなた達も知っているでしょう? ――――それなのに何故、お前達は抗わない? 何故、剣を持たない? 真に剣を向けるべき相手が誰なのか、本当はわかっているのではないのですか?」

 そう言い一歩前へ踏み出すと、兵士達が一斉に私に向かって剣を構えた。剣を向けられても、動揺の色を見せない私に、エイビスは片眉を上げる。

「変わられましたね、姫」
「一番変わってしまったのは――――この国だわ」

 たとえ閉鎖的な王国でも、それでもカーネットは美しかった。母様が愛していたカーネットは、綺麗だった。だが、そんな国が一つの町を潰してしまった。何の罪も持たないプランジットの住人を殺戮し、汚した。私とルイスを炙り出す為だけに、多くの命を奪ったのだ。

「無関係の人間を巻き込んで、第一王子に刃を向け、国王陛下の命を奪った…」

 カーネット王国も、リュスト帝国も、バール王国も――――。ルイスを傷つけ、彼から感情を奪ったものは何であろうと決して許しはしない。私が必ず報いを受けさせる。

「エイビス。私はあなたを許さない」
「そうですか。姫からのお言葉、感謝致します。では、僭越ながら私からも姫にお言葉を」
「…何ですって」

 エイビスは私に冷酷に告げる。

をお教え致しましょう」
「!! な、にを」
「てめぇ等…いい加減にしろよ」
 

 

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