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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season17-5

   

 颯天は都内のテレビ局で、ある人物の記者会見が始まる現場に遭遇していた。

 それが新藤がゴーストライター発言する記者会見だった。

 三年前に新藤と佐脇は出会い、作曲を依頼したのが佐脇だったと明かした。

 真相を語る新藤の記者会見が終わると、良好的に近寄る男が話をしていた。

 颯天はその姿を見て、すぐに察した。もしかすると新藤は…。

 新藤の真の狙いが浮き彫りになる。

 

 大きな会議室に多くのカメラと記者が集まっていた。

「なにごと?」興味本位で訊ねたのは御影の父親の颯天だった。某都内のテレビ局でのことだった。

「記者会見らしいですが、なんかとんでもないことみたいですよ」若いディレクターが答えた。

「ほう、そうかい。見ものだな。ちょいと覗いてみるか」

「ダメですよ。関係者だけですから」

「これって全国ネットで流れるの?」

「そうですね。これだけ集まっているんですから新聞社、雑誌記者…、それと──」

「へぇ、どんな会見なんだ…芸能人の結婚報告か?」颯天はいやらしい顔つきでディレクターに詰め寄った。

「いえ、それが音楽業界の謝罪会見みたいです」

「はっ? そうか…音楽か…」あまり興味のない颯天だった。

「あのひとみたいです」

 颯天は遠くを見るように顎をあげた。「えっ、どれ?」

 白髪の禿げあがった頭。どんぐりのような目。頬はこけた骸骨のようだ。口ごもる話し方。質問をすればしっかりと聞き取り返してくれる耳。痩せ細った体形。

 その主役と思われる冴えないおじさんが一礼した。

「使い捨てのティッシュみたいなおっさんだな」颯天の例えに若いディレクターは呆然としていた。

「佐脇氏が作曲したという“MUROMATI”というクラシック音楽ですが、本当の作曲家は…わたし新藤 真通(しんどう まさみち)がしました」

 衝撃的な告白にカメラのシャッターはマシンガンのように光輝いた。

「まぶしい、すげーな…」颯天は驚いた。

 新藤はつづけた。「自分は佐脇氏のゴーストライターです」

 質問が次々とんだ。

『佐脇氏は自分で作ったんではないと、共同制作でもないんですか?』記者がいった。

「はい、ちがいます。すべてわたしが作曲しております」

『では、どうして佐脇氏は自分が作曲したなんていったのでしょうか?』

「それは最初から経緯をお話ししないとなりませんので、まず出会ったところからお話しします」
 
 

 三年前に彼と出会い──、と話しは続いた。

 某音楽大学のピアノ専攻講師、クラシック作曲の講師を掛け持っている新藤氏。

 授業の一環で、即興で作曲をしてみせた新藤氏。ピアノの奏でるテンポや旋律のセンスのよさに佐脇は衝撃を打たれたという。

 実際は佐脇氏の奥さんが新藤の即興演奏した曲が素敵だったといったのを信じたという。

 聴覚障害のある佐脇氏だからだ。

 そこで佐脇氏は新藤氏に提案した。

『自分のために作曲をしてほしい。世界に通用する壮大なクラシック音楽を』

 

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