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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第49話 最後に見た景色は

   2017年2月10日  

信じた者の為、幼き王女は陰謀と悪意に抗い、立ち上がる。
王女と王子の運命を駆ける王国ファンタジー。
次回、第一章完結。

「……ねえ、私は……いてはいけない存在だったの――――?」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

 

 
「こんなにも残酷で、卑劣で……大切なものばかりが奪われて、消えて行く……」

 掴みかけていた自分自身の存在意義も。
 手を伸ばせば届く距離にいた大切な人も。
 ――――もう、私の手では触れることすら叶わない。

「っ、うぅ…」

 こんなはずではなかった。こんな終わりを認めたくなかった。けれど、世界が私にその結末を望むから――――。

 カーネット王国は、私の信じていた国で、暮らしていた別城は、私の世界そのものだった。私の世界が燃えたあの日から、心に出来てしまった空洞。抱いた憎しみも、悲しみも、全部そこに詰め込んだ。それでも溢れる。溢れ出して、涙になる。ルイスは、私の泣き顔なんて見たくはないだろう。だが、私にそう言ってくれる兄も、もう近くにはいないのだ。

 私は結局、全て守ると言いながら、守りたいとそう願いながら、

「……どうして」

 神様は、私の願いを見て見ない振りをする。そこにある想いも、やり遂げるべきことも、生きる意味でさえも、見届けてはくれない。
 私だけの願いではなくても、私以外の誰かが私の幸せを望んでくれていたのだとしても、それでも踏みにじられる。それは、どうしてなのだろう――――。

 私に生きることを考えさせてくれた人達を守りたかった。私の為に、命を懸けてくれた人を救いたかった。本当は、あの時、逃げたくなんかなかったのだ。

「ジンク……」

 幼い頃から私とルイスに仕えてくれた。私達の傍で、生きてくれていた少年。
 ルイスを頼むと、そう言った彼の手を無理矢理にでも掴みたかった。たとえあの場で死んでしまうことになったとしても、本当はそれでも構わなかった。けれど、私がそうしなかったのは――――いや、そう出来なかったのは、どんなに辛くても悲しくても、“生きなくてはいけない”と、そう思ったからだ。
 ミッシェルも、ウィリーも、プランジットで出会った人達も――――生きなくてはいけなかった。死んでしまってはいけなかったのだ。

「――――死んでほしくなかった。死なせたくなかった。皆と生きていたかった。皆に……生きていてほしかった」

 彼等の名を口にすることすら、私には許されない。私とルイスを守る為に、その命を懸けてくれた全ての人達の未来を奪ってしまったのは、やはり私だ。

「どうしたらよかったの…」

 目を開けば、私に向かい突き立てられた槍が飛び込んでくる。受け入れるように広げていた両腕を、私はゆっくりと下ろした。力の入らない手の平は、握り締めることすら出来なくて、心にばかり痛みが圧し掛かる。

「私はどうしたら、皆を救えた…?」

 その問いに、誰も答えることは出来なかった。向けられた矛先が、答えなのだ。

 私はずっと、私がここに在る理由を考えていたけれど、それすら意味のない行為だったのかもしれない。意味なんてない。それでも考えていたかった。答えを知りたかった。自分がどう在るべきなのか、どんな私だったらよかったのか。結局知りたかったことはそれだった。

 どうしたら、よかったのか。
 ――――それが一番、知りたかった。
 

 

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