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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season17-7

   

 御影と小柴はJ-Classicに訪れ安田と光田と対座すると、佐脇側が訴訟を起こしたといった。

 本来は和解の示談ということをJ-Classic音楽事務所は世間の指摘もあり穏便にすませることをいった。

 佐脇はこれを反発した。どうしても印税収入にこだわって、作曲者も自分であるという。

 今度は佐脇が記者会見をすることになった。そこでなにかすべての真相を語るという。そして主張もする。

 世間に訴えるつもりなのだろう。

 御影も今度は記者会見を見る。

 その記者会見に現れた佐脇は、驚愕そのものだった。

 

 その後ろ姿を遠目で見送る佐脇の奥さん。

「帰ったわよ、探偵だって…物騒なのが出てきたわね」タバコに火をつけてたたずむ奥さんだった。

 床に正座させられている佐脇。

「あんたがわるいのよ。こんなことになるなんて…策略が台無し。これで多額の印税が入って暮らせるはずだったのがすべてパーよ」奥さんは夫を蔑んでいた。

「すまない…」暗い声が室内を這った。

「なに? 耳ばかりか声も不自由なの? スクラップめ」手話をしながら言葉をかけていた。

 佐脇はうつむき罵声を浴びている。

「いいかしら、戦略が練れる頭脳があるからあなたと一緒になったの、ここまで数十年かかったチャンスをあんな偽善者の小汚い男に露見されるなんて本当にふがいない。だれがここまでシナリオを企ててきたと思っているの?」

「はい、きみだよ」

 張り手で側頭部を引っ叩いた奥さん。

 佐脇 吉海江(さわき きみえ 40歳)。地味でさえないが痩身で美人ではある。着飾らないせいで幸が薄い。これはすべて演じていた。元女優志願であったが叶わず。そのため金に強欲になり、不自由な耳で音楽をしてきた佐脇氏と出会う。そこで別の顔が出た。

 佐脇 晴樹(さわき はるき 42歳)。難聴の作曲家。音楽大学を23歳で卒業したが、耳が不自由なため一年留年した。だがこの一年延びたことでこの男の中で作曲をすることのなにか別の考えが浮かび、そして数十年の時を経て、ついに現代のベートーヴェンとまでいわれ注目を浴びた。

 荒々しい黒い髪形。サングラスをしてまるで世界を盲目にして音楽の世界に没頭するために。閉ざされた無音の世界で集中力は格段にあがり神の領域に達した。大柄の体格はピアノを弾く指でもないが繊細な音楽を生み出す。

 世界的にヒットした“MUROMATI”。

「しかたない」吉海江はいった。「今度はこちらの番ね」

 

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